魚鱗癬とは,皮膚の角層の剥脱機構に先天的異常をきたし,全身の皮膚が乾燥・粗造となって鱗屑を呈する遺伝性角化症の総称である。遺伝学的異常に起因するフィラグリンなどの機能低下により皮膚バリア機能が障害され,水分保持能低下が生じる。遺伝形式や皮疹の範囲,合併症の有無により,皮膚症状のみの非症候性魚鱗癬(尋常性魚鱗癬,X連鎖性魚鱗癬,表皮融解性魚鱗癬,常染色体潜性遺伝性魚鱗癬など)と,他臓器症状を伴う魚鱗癬症候群に分類される。頻度の比較的高い尋常性魚鱗癬は幼少期発症で軽症なのに対し,稀な病型である常染色体潜性遺伝性魚鱗癬には出生時から重度の紅皮症・角質増生を呈し,新生児期に致死的となりうる病型(道化師様魚鱗癬など)が含まれる。近年,角化障害疾患全般が「表皮分化疾患 (epidermal differentiation disorder:EDD)」と再定義され,疾患名は原因遺伝子+表現型に基づく新分類が提唱されている1)〔例:尋常性魚鱗癬=FLG-n(nonsyndromic) EDD〕。
▶診断のポイント
【症状】
全身の乾燥と鱗屑や落屑を呈する症例では,その発症年齢と皮疹分布が重要である。出生時~新生児期発症なら先天性魚鱗癬が示唆される。尋常性魚鱗癬は生後数カ月〜1歳頃に四肢伸側主体の細かい鱗屑が出現し,思春期までに悪化した後に軽快する。X連鎖性魚鱗癬はほとんどの症例が男性であり,新生児期から全身に暗褐色の大型鱗屑が生じ,以後も症状が持続する症例が多い。毛髪異常や難聴など皮膚以外の他臓器症状があれば,魚鱗癬症候群の可能性を考える。
【検査所見】
重症例や魚鱗癬症候群が疑われる症例では,皮膚組織所見に加えて遺伝学的検査が診断の一助になる。遺伝形式を考える際には家族歴の有無が重要な臨床情報となる。
