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好酸球性鼻副鼻腔炎―マクロライドとステロイド,そして生物学的製剤の使いわけ

登録日: 2026.07.30 最終更新日: 2026.07.30

前田陽平 (JCHO大阪病院院長特任補佐/耳鼻咽喉科診療部長)

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マクロライドとステロイドの使い方

さて,治療ですが,好酸球性鼻副鼻腔炎であっても非好酸球性鼻副鼻腔炎であっても,「保存的加療に効果がなければ手術を考慮する」という方針は原則変わりません。

保存的加療の期間は明確には定められていませんが,筆者はEPOS2020などに従い6~12週程度と考えています。つまり,長くて3カ月程度の保存的加療が奏効しなければ手術を考慮する,ということになります。保存的加療としては,①マクロライドは効きにくいこと,②ステロイド点鼻は比較的奏効することがあること,③経口ステロイドはかなり奏効すること,などが特徴になります。以下,順に説明します。

1型炎症の合併が疑われる場合はマクロライドも投与しますが,そうでない場合や鼻茸が大きい場合は投与しないこともあります。ステロイド点鼻として,デキサメタゾンなどの液体状の点鼻薬については,バイオアベイラビリティが高く,1カ月を超える投与で副腎皮質機能低下などを起こすことがあるため,1カ月までとしています。噴霧型のステロイド点鼻は,欧州では標準治療となっていて,長期の使用も問題ありませんが,日本での保険適用はアレルギー性鼻炎のみとなっているので注意が必要です。経口ステロイドについては,使用するとしても短期,具体的には1週間以内の投与にとどめます。

投与量については,決まったものはありませんが,筆者自身はプレドニゾロンで30mg以下とすることが多いです。一度投与して,その後は投与せず経過観察します。原則としては,EPOS2020に従って年2回の投与までは許容と考えています

生物学的製剤―4剤の使いわけ

近年,選択肢として重要になっているのが生物学的製剤です。2型炎症に関わる様々なサイトカインをターゲットに生物学的製剤が開発されてきています。具体的には抗IL-4受容体α抗体デュピルマブ,抗IgE抗体オマリズマブ,抗IL-5抗体メポリズマブ,デペモキマブ,抗IL-5受容体抗体ベンラリズマブ,抗TSLP抗体テゼペルマブの効果が報告されています。

この中で,現在本邦で「鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎」に適応があるのはデュピルマブとメポリズマブ,デペモキマブ,テゼペルマブです。デュピルマブはIL-4/13,メポリズマブとデペモキマブはIL-5,テゼペルマブはTSLPをターゲットにした生物学的製剤で,いずれも鼻閉や鼻茸サイズの改善に寄与することが知られています。「最適使用推進ガイドライン」に従って投与することが求められます。特徴として,デュピルマブのほうがより早期に効果が出ることが知られていますが,特に投与初期の好酸球数の増加に留意する必要があります。また,いずれも気管支喘息に適応がありますが,デュピルマブの場合はそれに加えてアトピー性皮膚炎,結節性痒疹,特発性慢性蕁麻疹,慢性閉塞性肺疾患などに適応があり,メポリズマブはEGPAにも適応があります。デペモキマブとテゼペルマブは,鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎と気管支喘息のみに適応があります。半年程度の投与で効果が乏しい場合は変更を考慮します。各薬剤の特徴と留意点を3にまとめています。

生物学的製剤の使いわけをどうするか,ということもよく議論になるポイントです。まず,大前提として,鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎に対する生物学的製剤では,直接比較の二重盲検試験は行われておらず,ある薬よりこの薬が効く,ということを強いエビデンスで示すことは困難です。その前提のもとで,間接的な比較試験はいくつかあります1516。デュピルマブが比較的優位ではないかと考えられるデータですが,テゼペルマブに関する検討はまだデータが少ないこともあり,今後さらにデータが蓄積することが期待されます。

強いエビデンスとは言えませんが,私自身は,好酸球数の少ない場合はデュピルマブを第一選択としつつ,好酸球数の多い場合にテゼペルマブやメポリズマブ,デペモキマブを考慮する,という感じに考えています。デュピルマブは,投与により好酸球数が上昇することがしばしばありますので,好酸球数が多い場合は,第一選択とはしていません

上述したように,併存する疾患についても念頭に置いて薬剤選択を行う必要があります。たとえば,EGPAが疑われるような場合は,メポリズマブを第一選択としています。

好酸球性鼻副鼻腔炎の診療は,生物学的製剤の登場によって大幅に変わりました。個人的には,術後に長期にステロイド内服加療を行う人は,ほとんどいなくなったように感じます。ステロイド内服継続,あるいは短期ステロイド投与が繰り返し(年2回以上)必要な患者は,生物学的製剤の導入を積極的に検討します。好酸球性鼻副鼻腔炎の治療のゴール設定はなかなか難しいですが,個人的には「継続的な経口ステロイドを用いずに鼻副鼻腔炎の症状をコントロールすること」だと考えていて,この意味で生物学的製剤の効果は非常に大きいと言えます。今後も新たな生物学的製剤が適用になると考えられます。

※この記事は,FOCUS「鼻副鼻腔炎の治療戦略」の一部を抜粋・編集したものです。


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