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熱中症にかかったときは,どれくらい体温を下げればよい? 冷やしすぎはよくない?【熱中症の謎となぜ】

登録日: 2026.07.17 最終更新日: 2026.07.17

一二三 亨 (杏林大学医学部総合医療学 救急総合診療科 准教授)

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Answer
過冷却に対する恐れから,従来のActive Coolingによる冷却では39℃や38℃が目標温度として考えられてきました。現在は血管内冷却装置が進歩,普及しているので,それらの温度に固執する必要はなさそうです。

 熱中症の治療では,「どこまで冷やすか」という深部体温の目標温度(冷却温度目標)が重要です。冷却温度目標の考え方から,実際の治療における目安などを紹介します。

ガイドライン2024では?

 まずは『熱中症診療ガイドライン2024』を見てみましょう1)

CQ3-03 熱中症の治療において,目標体温を38.0℃とすることは有用か?
推奨:介入を行うことを弱く推奨(提案)する
重症熱中症に対して,従来のActive Cooling〔冷水浸水(Cold water immer-sion),蒸散冷却法,氷囊など〕では目標体温を38.0℃として速やかに冷却することを弱く推奨する。

となっています。この根拠となるのは1つの観察研究にすぎません。その後,記載が続いており,「ただし」と条件がついています。

ただし,38.0℃を目標に設定するのは従来のActive Coolingによる過冷却を防ぐためであることに留意する必要がある。一方で,血管内冷却カテーテルを用いた深部冷却などに代表される高度な体温管理療法が可能であれば,38.0℃に固執する必要はない。

と書かれています。つまり,ポイントは,「従来の」と「高度な」の違いですね。「高度な」は特殊なサーモガードTMなどの血管内冷却法を指しますね。

過去の有名なレビューでは?39℃?38℃?37℃?

 では,温故知新で過去の有名な総説を見てみましょう(表12〜4)。3つの総説を比較しています。Bouchama(2002)2),Hifumi(2018)3)では,いずれも39.4℃を1つの目標としていました。なので,まずは何とか38℃台に入るくらいまで体温を頑張って下げよう,と。

 そのような中,最新のBouchama(2022)4)では,なんと37℃とのことです(図1)。様々な温度が登場しますね。「大切なのはしっかり冷やすこと,ただし従来の方法では過冷却には注意しないといけませんよ」ということですね。

過冷却(over cooling)は悪なのか?

 過冷却(over cooling)とは,体温が目標温度よりもどんどん冷えてしまうことです(図2)。実際に患者さんを冷やしていって,冷えすぎるとハッとしますよね。私は経験があります。ただ,この過冷却,そこまで恐ろしいものでしょうか?少し冷静に考えてみたいと思います。

 PubMedなどで文献検索を行ったところ,過冷却の症例報告は散見されますが,過冷却群と過冷却していない群の2群での予後を比較した研究や,過冷却に伴う死亡例の報告は見当たりませんでした。ChatGPTでも調べてみましたが,同じ答えでした。もちろん過冷却となって33℃とかにまで下がってしまうと,不整脈を誘発したり電解質異常をきたしたりする可能性があるため,防ぐ必要があると考えますが,ここで強調したいのは,過冷却を恐れて十分な冷却がないがしろにされてはいけない,という点です。「副反応を恐れすぎて,治療効果のある十分な治療を行わない」というのは本末転倒ですね。

理想は?

 今日のように,血管内冷却装置が進歩・普及した状況であれば温度設定通りの体温変化を得ることができますので,そのような場合には『熱中症診療ガイドライン2024』1)に記載があるように38℃に固執することなく,37℃や36℃にコントロールするのが良いと思われます。

文 献
1)日本救急医学会:熱中症診療ガイドライン 2024.
[https://www.jaam.jp/info/2024/files/20240725_2024.pdf](2025年4月18日閲覧)
2)Bouchama A, Knochel JP:Heat stroke. N Engl J Med. 2002;346(25):1978-88. PMID: 12075060
3)Hifumi T, Kondo Y, Shimizu K, et al:Heat stroke. J Intensive Care. 2018;6:30. PMID: 29850022
4)Bouchama A, Abuyassin B, Lehe C, et al:Classic and exertional heatstroke. Nat Rev Dis Primers. 2022;8(1):8. PMID: 35115565

(本稿は,熱中症診療の最前線で活躍する著者が,熱中症の予防から治療までを科学的根拠に基づいて解説した『熱中症の謎となぜ』(一二三 亨著)の一部を抜粋・編集したものです。)


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