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蜂刺傷とアナフィラキシーショックについて

登録日: 2026.07.20 最終更新日: 2026.07.20

平田博国 (獨協医科大学埼玉医療センター 呼吸器・アレルギー内科教授)

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患者から「昨日蜂に刺された。知人から蜂に2回刺されると命に関わることがあると言われた。山歩きをするので,今後どう注意したらよいか教えてほしい」と質問されました。どう答えるのが正しいでしょうか。
蜂の種類にもよりますし,刺された人の実数把握は困難と思われるので,正確な発現頻度はわからないとは思いますが,アナフィラキシー発症は年間に何例くらいの報告があるのでしょうか。ご教示下さい。(京都府 K)


【回答】

 【蜂刺傷における年間死者数は15〜20名程度。蜂毒の感作が確認されたらアドレナリン自己投与製剤の処方を検討】

蜂刺傷による年間死亡者数(表11)は,近年15~20名程度であり,ほとんどが蜂毒アレルギーによるアナフィラキシーショックと考えられています。アレルギー発症機序の多くは,蜂毒に対する特異的IgE抗体を介した即時型アレルギー反応です。すなわち,蜂毒に感作された人が,再刺傷によりアナフィラキシーを発症します。蜂毒に対する感作状況を確認する上で,蜂毒(アシナガバチ,スズメバチ,ミツバチ)特異的IgE抗体の測定は有用であり,今後の蜂刺傷への対策・予防にきわめて重要な検査法です。本邦における一般人を対象とした蜂刺傷における感作状況,年間アナフィラキシー発症数や発現頻度を明らかにした実態調査の報告は見受けられません。

筆者らは,屋外労働者(1466名)を対象とした疫学的調査として,蜂毒特異的IgE抗体を測定した結果,林業・木材製造業者の約42%,電気工事業者の約31%,養蜂業者の約78%が陽性であるという,蜂毒に対する感作状況を明らかにしました(表22)。さらに,全身症状(アナフィラキシー)出現の経験者は,林業・木材製造業者の約21%,電気工事業者の約14%,養蜂業者の約31%に認められました。また,屋外労働者における蜂刺傷による全身症状出現者(261名)の症状別割合として,全身皮膚症状のみが158名(60.5%),消化器症状が22名(8.4%),呼吸器症状が24名(9.2%),重篤なアナフィラキシー症状である心血管系症状は57名(21.8%)に認められました3)。これらの結果から,蜂毒に感作された人やアナフィラキシー発症の経験者への再刺傷時における対策・対応がきわめて重要になります。

一般的な蜂刺傷への対策として,①蜂がいるような場所に近寄らない,②服装を工夫(黒色の装飾品は避ける,帽子を被るなど)して蜂を避ける,③匂い(香水,整髪料,ジュースなど)に注意して蜂を避ける,などを心がける必要があります。

もし蜂に刺された場合,アナフィラキシー発症時における対応として,第3者に連絡をとり,アドレナリン自己投与製剤(筋肉注射型:エピペン,点鼻型:ネフィー)を携帯している人は全身症状出現時に直ちに投与できるよう準備しておきます。30分間は動き回らずその場で安静待機し,何らかの症状が出現したら,第3者もしくは自らの携帯などから救急要請することが重要です。

過去に蜂刺傷経験のある人は蜂毒特異的IgE抗体を測定し,陽性かつ今後も生活環境の中で蜂刺傷を経験する可能性が考えられる場合,アドレナリン自己投与製剤の処方を検討する必要があります。また,アナフィラキシー発症経験者はアドレナリン自己投与製剤の携帯は必要不可欠です。

蜂毒アレルギーに対する根本的治療として,ハチ毒エキスを用いたアレルゲン免疫療法の有効性および安全性が報告4)されており,先進欧米諸国では標準的治療となっていますが,残念ながら本邦では保険適用外です。

【文献】

1) 厚生労働省:人口動態統計「死亡数,性・死因(死因基本分類)別」.

2) 平田博国:アレルギー. 2018;67(2):89-97.

3) Hayashi Y, et al:Allergol Int. 2014;63(1):21-6.

4) Krishna MT, et al:Clin Exp Allergy. 2011;41 (9):1201-20.

【回答者】

平田博国 獨協医科大学埼玉医療センター 呼吸器・アレルギー内科教授


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