主に下眼瞼に生じる疾患であるため,下眼瞼内反症について記載する。
眼瞼内反症の多くは,下眼瞼を構成する組織の退行性(加齢性)変化で生じる。本症は下制筋腱膜の弛緩が主な発症原因とされるが,下眼瞼サポートシステム(内・外眥靱帯,瞼板)の弛緩も一因となる。また,眼輪筋の異常運動(眼輪筋隔膜前部の瞼板前部への乗り上げ)も,直接的な病因ではないものの内反を起こすきっかけとなることから発症に関与している。以上が手術による矯正の対象となる病態であるが,その他にも,短軸眼や眼球陥凹でも生じる。
▶診断のポイント
下眼瞼の内方回旋により,眼表面への持続的な睫毛の接触を認め,異物感,充血,眼脂,流涙などをきたし,細隙灯顕微鏡で点状表層角膜炎をはじめとする角膜上皮障害を認めれば診断できる。これらは小児の睫毛内反症でも生じるが,組織に弛緩がない眼瞼は内方回旋を生じないため,区別は容易である。
▶私の治療方針・処方の組み立て方
簡単な診察で主な発症原因を推測することができる。下制筋腱膜の弛緩は,下眼瞼を下方に牽引させたときの瞼板の移動方向と眼瞼結膜の状態で判断する。瞼板が外方回旋せず,結膜囊に眼窩脂肪の突出が確認できれば,弛緩ありと推測する。また,下眼瞼サポートシステムの弛緩は,眼瞼中央部の皮膚を摘まみ,瞼縁が眼球から離れる距離で判断する。8mm以上の場合は弛緩ありと推測する。さらに,眼輪筋の異常運動は,用指的に内方回旋を改善させた眼瞼と瞬目との関係で判断する。瞬目と同時に内反状態に戻れば異常運動ありと推測する。ただし,本疾患は複数の検査において陽性を示すことが多いため,検査のみで治療方針(術式)を厳密に決めることは難しい。
