肺非結核性抗酸菌症は,土壌や水環境に存在する非結核性抗酸菌による慢性呼吸器感染症である。わが国ではMycobacterium avium complex(MAC)によるものが多く,結節・気管支拡張型が増加している。経過は緩徐であることが多いが,空洞病変,喀痰塗抹陽性,画像進行,症状進行を伴う例では肺障害が進み,死亡に至ることもある。診断基準を満たしても全例を直ちに治療するわけではなく,「診断」と「治療」はわけて考える。
▶診断のポイント
胸部CTで小結節,分枝状陰影,気管支拡張,空洞を確認し,他疾患を除外した上で,細菌学的基準を満たすかを判断する。基本は複数回の喀痰培養であり,痰が出にくい例では誘発喀痰,気管支鏡,胃液検査も考える。肺MAC症では抗GPL-core IgA抗体(MAC抗体)の特異度が高く補助診断として有用だが,抗体陽性のみでは確定診断とはならない。予後や治療方針が異なるため,菌種同定と薬剤感受性試験は重要である。
▶私の治療方針・処方の組み立て方
まず,治療適応を決める。空洞病変,喀痰塗抹陽性例は絶対適応であるが,それ以外に画像の経時的悪化,症状進行があれば治療を積極的に考慮する。一方,非空洞,喀痰塗抹陰性,排菌量が少なく,症状が軽い例では,慎重な経過観察も妥当である。治療を始める場合,肺MAC症ではマクロライド,エタンブトール(ethambutol:EB,15mg/kg,1日最大750mg),リファンピシン(rifampicin:RFP,10mg/kg,1日最大600mg)の併用を基本とする。ただし,筆者はクラリスロマイシン(CAM)よりもアジスロマイシン(AZM)を優先して用いる。AZMはRFP併用時の薬物相互作用が少なく,忍容性の点でも扱いやすいからである。さらに軽症例では,標準治療ではないことを説明した上で,AZMとEBの2剤併用で開始することがある。これは非空洞,喀痰塗抹陰性,進行が緩徐で,特にRFPとの薬物相互作用や忍容性が問題となる症例で選択する。
空洞例,重症例,喀痰塗抹陽性例では,初期3~6カ月にアミカシン点滴またはストレプトマイシン筋注の併用を考える。標準治療を6カ月以上行っても細菌学的効果が乏しい難治例では,アミカシンリポソーム吸入懸濁液(ALIS)の追加を検討する。
