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慢性胃炎[私の治療]

登録日: 2026.07.01 最終更新日: 2026.07.01

松﨑潤太郎 (慶應義塾大学薬学部創薬研究センター教授)

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慢性胃炎という呼称は,臨床現場においてきわめて広範な病態を包含している。内視鏡的あるいは組織学的な「形態学的診断」として用いられる場合と,心窩部痛や胃もたれといった「症候学的診断」として用いられる場合がある。本稿では,別稿で詳述されるヘリコバクター・ピロリ感染症機能性ディスペプシア(FD),および好酸球性胃腸炎を除外した,それ以外の慢性胃炎について述べる。具体的には,非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)やアルコール,胆汁逆流等による胃炎や胃のびらん,および自己免疫性胃炎(A型胃炎)が該当する。

▶診断のポイント

胃症状を訴える患者の多くは,「内視鏡で見える炎症や赤みを消失させれば,症状も完治する」と考えがちである。しかし,実際には内視鏡所見と自覚症状は必ずしも一致しない。この患者の想定と実際の症状の乖離を,治療開始前に患者と十分に共有しておくことが,過度な期待や治療への不満を回避し,良好な医師患者関係を築くための大前提となる。

内視鏡検査の主目的は,重度の逆流性食道炎(ロサンゼルス分類 Grade C, D)や活動期の胃・十二指腸潰瘍など,即座に強力な酸分泌抑制療法を要する疾患を確実に除外することにある。同時に,胃粘膜障害や胃運動機能異常を誘発する背景因子の精査が不可欠である。NSAIDs,アスピリン,ステロイド,骨吸収抑制薬などの内服歴に加え,アルコール,喫煙,過食,就寝直前の食事といった生活習慣があるかどうかを聴取する。また,近年急速に普及しているGLP-1受容体作動薬やDPP-4阻害薬といった糖尿病治療薬の胃排出遅延作用にも留意する。

内視鏡的に胃体部主体の高度な粘膜萎縮(逆萎縮)など,自己免疫性胃炎を疑う所見を得た際には,抗胃壁細胞抗体・抗内因子抗体の測定に加え,他系統の自己免疫性疾患の検索が重要となる。特に,橋本病やバセドウ病などの甲状腺疾患,および1型糖尿病の併存頻度が高いことが知られており,これらの既往や潜在的な合併の有無を確認する。


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