近年、国がセルフメディケーションの推進を掲げていることもあり、医療用医薬品と同成分・同用量で使用できるOTC医薬品、いわゆる「スイッチOTC」が増え、そのラインナップも充実しています。ここ1〜2年で承認されたものだけでも、1日1回のステロイド点鼻薬『ナゾネックスⓇ』、抗ヒスタミン薬の点眼薬『アレジオンⓇ』、プロトンポンプ阻害薬(PPI)の『タケプロンⓇ』『オメプラールⓇ』『パリエットⓇ』、COX-2阻害薬の『モービックⓇ』、緊急避妊薬『ノルレボⓇ』、ED治療薬『シアリスⓇ』など、錚々たる医薬品がスイッチされました。
中でも注目したいのが、2026年5月にスイッチOTCとして承認されたラメルテオン製剤『ロゼレムⓇS』です。
これまでOTC医薬品で“睡眠”に関連したものと言えば、抗ヒスタミン薬「ジフェンヒドラミン」の眠気を利用した製品が中心でした。しかし、この「ジフェンヒドラミン」は、眠気を催すことはあっても、睡眠に有益であることを示す根拠は乏しく1)、抗コリン作用による副作用や翌日への持ち越し効果2)といったデメリットも大きいことから、一過性の不眠に対してもあまり推奨できるものではありませんでした。
その点、「ラメルテオン」は健康な成人の一過性の不眠に対しても単回投与で有効性が確認されているほか、持ち越し効果などの副作用も少ないことが示されており3)、益と害のバランスに優れた選択肢と言えます。これまでは「ジフェンヒドラミン」で対処せざるをえなかったケースにおいても、「ラメルテオン」を提案できる場面は非常に多いと思われます。
一方で、不眠の訴えの背景には、生活習慣の乱れだけでなく、精神疾患や睡眠時無呼吸症候群など、受診を勧めるべき要因が潜んでいることも少なくありません。『ロゼレムⓇS』の登場を、国民が自身の“睡眠”について改めて考える大きな契機とするとともに、医療従事者がその悩みを拾い上げ、適切な支援につなげる機会としてもとらえたいところです。
【文献】
1) Sateia MJ, et al:J Clin Sleep Med. 2017;13(2):307-49.
2) Kay GG:J Allergy Clin Immunol. 2000;105(6 Pt 2):S622-7.
3) Zammit G, et al:Sleep Med. 2009;10(1):55-9.
児島悠史(薬剤師/Fizz-DI代表)[薬剤師][OTC医薬品][ラメルテオン]