第17回日本プライマリ・ケア連合学会学術大会(2026年)にて、表題のシンポジウムを開催し、実りある議論を展開することができたので報告したい。
新たな地域医療構想やかかりつけ医機能報告制度においては、「在宅医療」「包括期医療」「かかりつけ医機能」といった表現で、プライマリ・ケアが果たす役割への期待が包含されている。しかし現実には、プライマリ・ケアの専門性や、総合診療専門医、さらにはプライマリ・ケアを専門とする薬剤師・看護師の役割といった視点はほとんど見当たらない。本シンポジウムでは、医療政策を担当する行政官と、診療所や病院で活躍するプライマリ・ケアの専門家が集い、そうした視点を取り入れた医療政策に関する共通基盤を、未来志向でともに創出することをめざした。
議論の基点となったのは、2040年に向けた新たな地域医療構想である。人口減少と高齢化が進む中、従来の急性期中心の医療から、高齢者の多疾患併存やフレイル、在宅療養、人生の最終段階における支援までを担う「包括期」が医療の主戦場になるとの認識を共有した。議論では、包括期病院や地域包括ケア病棟が重要な役割を果たし、その中核を担うのが総合診療医であることを確認した。また、患者は診療所、包括期病院、急性期病院、在宅医療の場を行き来する「旅」を続ける存在であり、その流れを支えるための連携が不可欠であることも共有された。
一方、診療所においては、従来の個人開業モデルだけでなく、複数の医師が外来診療や訪問診療を分担するグループプラクティスや、「診療所を支援する診療所」といった新たな形態が提案された。これにより、診療所・病院を問わず、若手総合診療医が魅力ある多様な働き方を選択できる環境づくりが期待される。
医療機関がこうした役割を果たすためにも、人材確保は大きな課題である。日本には約6万人規模のプライマリ・ケア人材が必要と推計される一方で、総合診療専門医数は伸び悩んでいる。ベテラン医師へのリカレント教育を通じた量的拡大に加え、チーム医療やAIの活用を通じた総合的な人材戦略をめざすことが急務であることも改めて確認された。
最後に、医療機関の役割分担、人材育成、総合診療の実践は相互に結びついた「三位一体」の課題であることを確認した。学会は会員のためだけでなく、地域住民の健康課題に対する具体的な解決策や地域医療のモデルを社会へ発信していく責務がある。その認識をシンポジスト全員で共有するとともに、今後も学会内外の多様なメンバーと協力していく必要性を確認した。
シンポジウムを通じて、プライマリ・ケアを2040年の日本の医療を支える重要な基盤として位置づける必要性を改めて痛感した。同時に、その実現に向けて学会が進むべき道筋も見えてきたように感じている。
草場鉄周(日本プライマリ・ケア連合学会理事長、医療法人北海道家庭医療学センター理事長)[総合診療/家庭医療]