脳性麻痺とは,受胎から生後4週以内に生じた脳の非進行性病変に基づく,永続的な,しかし変化しうる運動および姿勢の異常で,その症状は満2歳までに発現する,と定義される。原因の多くを占めるのは低酸素性虚血性脳障害であり,以下の記載はそれによる脳性麻痺を対象とする。
▶診断のポイント
運動発達の異常を問診や診察で確認する。たとえば,5カ月になっても頸定がない,6カ月になり物に手を伸ばしてつかむようになったが片手しか使わない,10カ月ではいはいを獲得せず,両腋窩を持って抱き上げたときに両下肢をぴんと伸ばして交差させる,といったことがあれば脳性麻痺を疑う。脳性麻痺が疑われた場合,早産,低出生体重児,新生児仮死といった周産期における危険因子の有無を確認し,頭部MRIを施行して脳病変を評価する。症状と病歴,画像所見の異常が一致すれば診断となるが,画像所見が明らかでないこともある。
▶私の治療方針・処方の組み立て方
脳性麻痺の基本病態は脳病変による筋緊張の異常であるが,そこから二次的に股関節脱臼や側弯症などの骨格変形が生じ,痛みや呼吸・消化機能の低下,睡眠障害など,全身に様々な病態が生じて互いに影響を及ぼし合う。摂食・嚥下機能障害も生じやすい。運動症状だけでなく,知的障害や精神症状,てんかんといった合併症への対応も必要である。脳病変は不可逆的であり根治療法はない。個々の患者の病態を一つひとつ評価し,それぞれに対症療法を行うことが重要であり,多職種による取り組みが必要である。各臓器症状への対応や,リハビリテーションといった脳性麻痺全体に対する治療は本稿の範疇を超えているため,以下に筋緊張亢進に対してエビデンスのある治療を中心に述べる。
