硝子体出血は,無血管組織である硝子体腔内に異所性の血液が混入する状態であり,いかに軽度であっても必ず病的背景を伴う。頻度の高い原因として増殖糖尿病網膜症,網膜静脈閉塞症,網膜裂孔,後部硝子体剝離,網膜下出血(加齢黄斑変性,網膜細動脈瘤破裂による)などが挙げられる。加えて,バルサルバ網膜症や炎症性疾患による新生血管からの出血も鑑別に挙げられる。出血の原因となる疾患は,糖尿病,高血圧,動脈硬化などの全身疾患を背景に持つことが多く,眼所見と全身情報を合わせて診断する。
▶診断のポイント
出血源の特定が最も重要である。初診時は眼底観察が困難な場合が多く,Bモード超音波検査で網膜剝離の有無を確認する。糖尿病網膜症が疑われる場合は,僚眼の所見が診断の一助となる。また,眼底が透見できる程度の硝子体出血であれば,蛍光眼底造影(FA)は周辺部ぶどう膜炎や新生血管の同定に有用である。患者背景(糖尿病,高血圧,年齢など)を把握し,原因を推定する。
▶私の治療方針・処方の組み立て方
硝子体出血に対して最も重要なのは,出血の原因を正確に診断した上で,再出血と視機能障害のリスクを最小限に抑えることである。特に網膜裂孔・剝離が疑われる場合や,剝離が明瞭でなくても出血が濃い場合には,早期手術を行う。糖尿病網膜症では,汎網膜光凝固(PRP)の施行有無を確認し,未施行であれば早期の手術を選択する。加齢黄斑変性などに伴う網膜下出血では,tPA(組織型プラスミノーゲンアクチベータ)網膜下注入併用硝子体手術を行う。また,原因が明らかでない反復性の硝子体出血では,周辺部網膜血管炎の可能性を念頭に置き,FA(フルオレセイン蛍光眼底造影)での評価と,必要に応じた全身精査を行う。止血や血流改善を期待してアドナⓇ(カルバゾクロムスルホン酸ナトリウム)やカルナクリンⓇ(カリジノゲナーゼ)を処方する事例が散見されるが,エビデンスはない。内服による硝子体出血消退は期待できないと考えられる。
