2026年6月、富山県高岡市の厚生連高岡病院が記者会見を開き、地域包括ケア病棟を廃止したと発表しました。同時に、手術支援ロボットを2台体制に増強し、重症救急や手術といった急性期医療へ特化する姿勢を鮮明にしています。これは、地域医療構想における「急性期拠点機能」をめざすという宣言ととらえてよいでしょう。診療実績を考えれば、同院が既に急性期拠点機能を担っていることは明らかであり、方向性そのものに驚きはありません。むしろ注目すべきは、一定の稼働率を確保していた地域包括ケア病棟を、あえて手放したという経営判断です。
2026年度診療報酬改定では、急性期拠点機能を担うハイボリュームセンターを想定した「急性期病院A一般入院料」や「急性期総合体制加算」が新設されました。これらを算定するには、地域包括ケア病棟や療養病棟など、ポストアキュート機能を担う病棟を院内に併設できない設計となっています。
手術などの急性期治療がひと段落した後、ケアプロセスのいわば「後工程」である退院支援や集中的なリハビリテーションを担う病床は、院外に確保しなければなりません。厚生連高岡病院の会見では、柴田和彦病院長が「回復期の部分をうちの病院から切り離していく」と述べています。急性期拠点病院をめざすということは、単に「手術や救急に集中する」というだけではなく、「後工程は地域のパートナーにゆだねる」という分業の宣言でもあります。
手前味噌ですが、当院ではこの「後工程の外部化」を先取りした動きを2017年から進めてきました。当院の前身である八尾総合病院と富山大学附属病院による「医療連携協定病院」の枠組みです。大学病院で急性期治療を終えた患者の継続治療を引き受け、リハビリテーションや退院支援を担う。さらに、地域の療養型病院や介護保険施設へつないでいく。現在は当院以外にも、自治体・公的・民間を問わず複数の医療機関が参加し、ネットワークを構築しています。
今後は、急性期拠点病院から地域急性期病院・リハビリテーション病院へ、さらに、療養型病院や介護保険施設、在宅へという、カスケード(段々滝)のような患者フローの構築が一気に進むと予想されます。これまで院内で完結していたPFM(patient flow management)を、医療圏全体へ拡張するイメージです。
ここで問われるのは、「自院はこのカスケードのどこに立つのか」という戦略です。川下に位置するのであれば、急性期拠点病院から速やかに患者を受け入れる体制づくりが重要になります。一方、川上の急性期拠点病院をめざすのであれば、後工程を安心してゆだねることができるパートナーの確保が不可欠です。どちらの道を選ぶとしても、病院単独の経営努力だけでは完結しません。
地域全体の大きな患者の流れの中で、自院の機能と立ち位置を定義し直す。大河ができてから居場所を探して飛び込むのではなく、小川のうちに「流れの設計」に関わることが大切です。
藤田哲朗(医療法人社団藤聖会理事、富山西総合病院事務長、医療経営士1級)[地域医療構想][急性期拠点病院][PFM]