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【識者の眼】「医療機関での『身寄りのない患者への対応』」小野 剛

登録日: 2026.06.24 最終更新日: 2026.06.24

小野 剛 (横手市病院事業管理者、全国国民健康保険診療施設協議会会長)

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高齢化と人口減少が全国に先駆けて進む当地域では、高齢者の1人暮らしや夫婦のみの世帯が増加し、また、多疾患併存で医療ニーズだけではなく介護・福祉ニーズも併せ持つ患者が多くなっている。そのような状況の中で、「身寄りのない患者への対応」が病院にとっても地域にとっても大きな課題となっている。

身寄りのない患者が救急搬送された場合、家族や親族との連絡が取れず、治療方針の決定に時間を要することがある。さらに、入院中に必要な物品の準備や入院費用の支払い、万が一最期を迎えられた際の遺体・遺品の引き取りや葬儀の手配など、誰がどのように対応するのかが不明なケースも少なくなく、病院にとって大きな負担となっている。様々な伝手をたどってようやく親族に連絡が取れても、遠方に住んでいたり関係性が稀薄になっていたりして、早急な対応が困難なケースがほとんどである。人と人とのつながりが比較的見えやすい地方でも最近はこのような状況であり、今後さらに高齢化が進む都市部では、地方以上に大きな問題になるのではないかと危惧している。

「身寄りのない患者」が救急搬送され、入院が必要になった際に病院で活躍する職種が医療ソーシャルワーカー(MSW)である。入退院支援の中心的な役割を担う彼らの働きは、高齢化社会の中でますます重要になっている。病院内外での多職種連携や医療・介護連携、さらには行政を含めた地域連携を推進する中で、MSWはハブ的な役割を果たしている。

Teamwork良く、Networkをフル活用し、Footwork軽く対応するMSWは、通常の患者の入退院支援だけでなく、身寄りのない患者の支援においても大きな役割を担っており、今後さらなる活躍を期待している。

2026年度診療報酬改定では、入退院支援加算の算定要件である「退院困難な要因」のひとつとして、「患者の意思決定支援及び退院後の生活に向けた調整を行うに当たって、家族及び親族との連絡が困難であること」が追加された。このようなケースでは、患者本人の判断能力が十分な場合と、判断能力が不十分で成年後見人制度を利用している場合、あるいは利用していない場合にわけて対応する必要がある。

厚生労働省は『身寄りがない人の入院及び医療に係る意思決定が困難な人への支援に関するガイドライン』を公表している。このガイドラインでは、患者の生活や意思決定を支援する家族等がいない場合の支援について、本人の判断能力に応じた具体的な調整方法や行政との連携のあり方が示されており、有用な内容となっている。また、『人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン』の考え方もふまえながら、多くの医療機関で活用され、質の高い入退院支援につながることを期待したい。

小野 剛(横手市病院事業管理者、全国国民健康保険診療施設協議会会長)[身寄りのない患者MSW入退院支援

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