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【識者の眼】「胎児診断から始まる家族支援─小児医療は胎児期から始まる」豊島勝昭

登録日: 2026.06.24 最終更新日: 2026.06.24

豊島勝昭 (神奈川県立こども医療センター新生児科部長)

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胎児超音波検査の進歩により、心疾患をはじめとする多くの先天性疾患が妊娠中から診断されるようになった。胎児診断によって、小児専門施設での出産や出生直後からの新生児集中治療が可能となり、外科治療やカテーテル治療の進歩と合わせて、かつては救うことができなかった命を救える時代になった。近年は、胎児治療も発展し、生まれる前から治療介入することで、後遺症をより少なくしながら救命できる可能性も広がっている。

胎児診断から胎児治療、そして新生児集中治療へとつながる周産期医療は、多くの子どもたちと家族の未来を変えつつある。小児医療は誕生から始まる医療ではなく、胎児期から始まる時代になったことを実感する。

近年は非侵襲性出生前遺伝学的検査(NIPT)をはじめとする出生前検査も普及しつつある。日本では命の選別への懸念から、国際的にみても慎重な制度設計が行われてきたが、検査を希望する家族は増えている。一方で、出生前検査は普及していても、出生後の医療や家族支援との連携が十分ではない環境で検査が行われているという現状もある。

「お腹の赤ちゃんに病気があります」

まだ見ぬ我が子についてそう告げられることは、多くの家族にとって人生で忘れがたい衝撃となる。そのとき家族が本当に知りたいのは、診断名や治療法だけではない。

「その子はどのように成長するのだろうか」

「生まれてくる赤ちゃんが加わることで、家族それぞれにどのような未来が訪れるのだろうか」

そうした、子どもや家族の未来への不安に直面する両親に接するたびに、私たち小児科医の役割も誕生後からではなく、胎児期から始まっているように思える。インターネットには多くの情報があふれている。しかし、情報が増えれば増えるほど不安は増すこともある。インターネットに、自分のお腹の中の赤ちゃんの情報はない。

だからこそ、胎児診断には検査結果を伝えるだけでなく、その子と家族の未来をともに考える周産期医療が求められていると思う。

小児科医は、我が子を思う親御さんたちの献身を数多く見ている。しかし、親子の愛情は誕生後の日々の暮らしの中で育まれていくものでもある。家族としてすごす時間をまだ十分に重ねていない妊娠中や出生直後から、親として十分に向き合えて当然と考える小児科医の視線は、時に家族を苦しめてしまうこともある。

病気の有無にかかわらず、様々な事情の中で出産を迷う家族がいる。さらに、病気があれば、子どもの将来や育児への不安から中絶を考える家族もいる。小児科医にも、産婦人科医とともに家族の事情や迷いに心を寄せる姿勢が求められる。

小児科医は、病気をもつ子どもたちの成長や家族の暮らし、地域で受ける支援について伝えることができる。だからこそ胎児診断では、病気や治療だけでなく、その先にある長期予後や生活に関する情報についても伝えていきたい。それは、小児科医だからこそ担える役割だと思う。

大変なことがないわけではない。しかし、医療とともに歩む中で気づける喜びや楽しさもある。その両方を伝えることで、ご家族が生まれてくる命と向き合うための支えになることができればと感じる。

命は、それぞれの事情の中で生まれてくる。

胎児診断の先には、子どもの未来だけでなく家族の暮らしもある。その未来について、迷いや不安にも心を寄せる周産期医療を、産婦人科医と小児科医で考えていきたい。

小児医療は胎児期から始まる。子どもと家族の未来を支える医療でありたいと思う。

豊島勝昭(神奈川県立こども医療センター新生児科部長)[周産期医療胎児診断家族支援

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