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【識者の眼】「ドラッグ・ラグよ、永遠なれ」小野俊介

登録日: 2026.06.22 最終更新日: 2026.06.22

小野俊介 (東京大学大学院薬学系研究科医薬品評価科学准教授)

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相変わらず「ドラッグ・ラグ」という言葉が大流行である。ラグの解消には創薬エコシステムやスタートアップ支援が必要らしい。もはや予算要求の最強の守護神と化している。

「時代はドラッグ・ラグからドラッグ・ロスへ」。意味がわからない。米国で上市済みだが日本ではずーっと未発売の薬が山ほどあることなど、何十年も前から業界人の常識。

ドラッグ・ラグはむろん製薬企業のビジネスの帰結である。企業が所与の条件下で生き残りを図った結果の表れ、つまり最適化の証がドラッグ・ラグだ。人口、豊かさ、承認要件がどの国も異なるから、上市のタイミングをずらさないと企業は損をする。ラグは生じて当然なのである。

その製薬企業が「ラグを解消するには……」というポジショントークを何十年間も続けているのは不思議である。まるで「我々はラグをなくしたいのに、悪者がそれを許さない」みたい。そんなわけあるまい。

「ラグを減らす」は「当社の利益を減らす」宣言と同じ。利益削減宣言をする営利企業を私は一度も見たことがないが、製薬企業はその「絶対にしないはずのこと」を、まるでCSR活動の一環のように誇らしげに宣言する。その奇妙さを誰も指摘しないのも恐ろしい。

日本の薬価の相対的な低さをラグの主因と決めつけるのも不思議である。薬価とラグは関係するに決まってる。が、それが単純な(反)比例などではないことは、ラグが成功確率、売上、費用等の複雑な関数群の変数のひとつであることを考えれば、経済学者でなくてもわかるはず。

「国内の臨床開発体制を整備すれば、治験数が増え、ラグは解消する」という熟成された怪しい仮説も、未検証のまま生き延びている。そもそも費用(供給)曲線を上にシフトさせたら、治験の数は減るはずなのだけど。その仮説、需要側まで考慮すると真偽がさらに怪しくなる。官需の源である政府が「日本の治験データは減らしてOKです」と、完全に白旗を揚げているのだから。

このように、ドラッグ・ラグ界隈の議論は何十年経っても深まっている気がしない。同じところをグルグル回ってるだけ。公の場でこの問題を議論してる人々の顔ぶれも常に新鮮である。当落を繰り返す政治家はともかく、日本ではお役人、業界人、そして学者までもが定年や人事異動で強制的に入れ替わる。「昔からのあの政策って効果ないなぁ」などと呟く危険人物は、自動的に排除される。

ほら、今日も政府の検討会で、お上に選ばれて鼻高々のフレッシュな委員たちが30年前と同じことを言い続けてる。

「ドラッグラグノカイショウニムケテ、リンショウケンキュウタイセイノセイビヲ……」

小野俊介(東京大学大学院薬学系研究科医薬品評価科学准教授)[ドラッグ・ラグ

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