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メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)感染症[私の治療]

登録日: 2026.06.21 最終更新日: 2026.06.21

小泉祐介 (和歌山県立医科大学臨床感染制御学講座教授)

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メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(methicillin-resistant Staphylococcus aureus:MRSA)感染症は,主に体表面を起点とした感染症で,菌血症の多くで発熱などの全身症状を認め,onsetが比較的明確である。接着因子・外毒素など特有の病原因子を持つことからバイオフィルム感染症(人工物感染・感染性心内膜炎)や播種性病変(化膿性脊椎炎・化膿性関節炎・肺化膿症・腎/脾/脳梗塞など)を伴うことも少なくない。このため,早期診断に加えて,遅滞なく十分な治療が求められる。
菌血症の場合には,可能な限り侵入門戸を同定し(過去),受診時点での感染臓器を把握し(現在),治療開始後に播種性病変が新たに生じないか(未来),の3つの時相に関してアセスメントを尽くし,状況に応じて最善の治療介入を行うことが重要である。
治療薬はバンコマイシン(VCM),腎機能低下例ではテイコプラニン(TEIC)を基本とする。標的治療の薬剤としてのみ,菌血症に対してダプトマイシン(DAP),膿瘍性病変に対してリネゾリド(LZD),維持治療や混合感染への対応としてST合剤(ST)を選択する。

▶診断のポイント

多くの場合,発熱と局所症状(皮膚軟部組織:局所の発赤・腫脹・疼痛,関節炎:関節痛,脊椎炎:腰背部痛や頸部痛)を生じるため,臨床症状で侵入門戸と局所感染の診断を行う。時に局所所見を伴わずfocus不明の菌血症を伴うこともあるので,発熱などの全身症状があれば診断に血液培養は必須である。

菌血症と診断した場合には,速やかに抗菌薬投与を開始することが望ましい。血液培養2セット中1セットでS. aureusを検出した時点ではコンタミネーションの可能性もゼロではないが,本菌の病原性が高いことから,その時点でもう1セットの結果を待たずに治療を開始してよい。S. aureusは適切な抗菌薬開始後も血液培養で陰性化しないことがしばしばあるため,定期的(2~4日ごと)に血液培養を再検して治療反応性を確認することが求められる。血液培養陰性確認日を起点として治療期間を決めることも多く,当院では小まめに陰性化を確認している。

血液培養の陽性シグナルを検出後,塗抹グラム染色(クラスター状グラム陽性球菌)の判定は直ちにできるが,従来法ではS. aureusの菌種同定までに1~2日を,メチシリン感受性判明までにさらに1~2日を要する。 マトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間質量分析計(MALDI-TOF MS)であれば,血液培養の陽性シグナル検出からほどなくS. aureusと同定できる。遺伝子検査(自動遺伝子解析装置GeneXpertシステム等)であれば1~2時間でメチシリン耐性を判定することが可能である。

菌血症症例では,感染性心内膜炎を除外するために経胸壁心エコー検査(TTE)は必須である。播種性病変(敗血症性塞栓症)については胸部CT(肺化膿症),腹部CT(脾膿瘍・腎膿瘍・腸腰筋膿瘍),脳MRI(脳梗塞→脳膿瘍),脊椎MRI(化膿性脊椎炎・椎間板炎)などの検査を必要に応じて施行する。これらの画像検査は,特に侵入門戸がわからない場合,onsetの時期が不明な場合,持続菌血症である場合には積極的に施行したほうがよい。特に化膿性脊椎炎は,初期にはMRIをもってしても検出できないことがあるため,症状悪化があれば再検を考慮する。また,人工弁の心内膜炎はTTEでは判別困難であるため,必要に応じて再検,もしくは経食道心エコー検査(TEE)を考慮する。


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