心不全の在宅管理においては,病状をみる上で内部障害である心不全自体の問題か,または,フレイルの進行によるものかを見きわめ,さらに,心不全とフレイルの病期を正しくとらえることが重要となる。特に,心不全のステージCまたはDの状態にあるかを見きわめることが,どこまで積極的な治療を行えるのかという判断につながるため,在宅管理の肝となるところである。適切な治療自体が症状緩和につながることも疾患の特異な点となる。
心不全患者に対する在宅医療の実践において,入院を回避しながら尊厳ある療養を支えるための5つのポイントを概説する。
▶治療の考え方
【適切な心不全治療】
臨床経過において,再入院が増える時期は退院直後と終末期の二峰性である。一般的にその要因は,退院直後は心不全うっ血の増悪で,終末期はフレイルに伴う誤嚥性肺炎や転倒,老衰,介護負担などの非心不全要因である。長期管理のために,うっ血の診かたは重要である。症状(労作時から安静時の息切れ増悪),体重(増加と減少),視診・触診(頸静脈怒張,肝頸静脈逆流,前腕挙上による末梢静脈変化,肝腫大,下肢浮腫,陰嚢浮腫,痔の悪化,労作時の呼吸状態),心音(Ⅲ,Ⅱp亢進),呼吸音(胸部ラ音),BNP/NT-proBNPの上昇など,在宅においても患者の包括的観察により,心不全の状態変化をみていくことができる。
心不全のstage D,特に高齢者では心不全のみならず「全不全」としてとらえ,身体的・社会的・精神的なフレイルも病態悪化の一因として評価する。心不全治療薬は,予後改善薬と症状緩和薬に大別される。拡張不全では予後改善薬のエビデンスはまだ不十分であり,利尿薬投与や併存症への対処を中心とした治療になる。収縮不全の予後改善薬4剤〔RAS阻害薬,ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MRA),β遮断薬,SGLT2阻害薬〕の選択は,血圧,腎機能,心拍数,併存症に基づく柔軟な導入・減量判断が必要である。RAS阻害薬では低血圧に寛容に,Cr上昇は30%まで許容する。MRAは低K血症例に積極的に導入する。SGLT2阻害薬は高齢者にも検討されるが,尿路感染や体重減少に注意する。β遮断薬は,弁膜症や慢性腎不全,低心拍出症候群の進行例では減量・中止を検討する。利尿薬と強心薬の治療では「のりしろ(余裕)」を持つことが重要である。
非薬物療法として,心不全患者への訪問リハビリテーションも有効である。疾患モニタリング,環境調整,活動調整,セルフケア支援,介助方法伝達,症状緩和リハビリテーションなどを行うことができる。特に在宅緩和ケアとして,呼気誘導,ポジショニング,三叉神経刺激,風をあてることなどは時に有効であり,引き出しを1つでも多く持つことが在宅管理には必要となる。
