カルチノイド症候群とは,神経内分泌腫瘍の一部(機能性神経内分泌腫瘍)に随伴する皮膚紅潮や下痢などの特徴的な症状の総称である。原因は,腫瘍細胞から過剰産生されたホルモンやペプチド(セロトニン,ヒスタミン,ブラジキニンなど)が血管の拡張・収縮,血管透過性の変化,消化管の蠕動運動亢進を介して,症状を引き起こすことによる。
▶診断のポイント
まず,神経内分泌腫瘍の診断を行う。神経内分泌腫瘍の中で中腸(空腸,回腸,盲腸)発生の腫瘍や肝転移例は,カルチノイド症候群を随伴しやすい。カルチノイド症候群を疑う症状は,下記のようなものである1)。
•皮膚紅潮:典型的な症状のひとつで約85%の患者にみられる。顔面・頸胸部を中心に皮膚紅潮が出現し,発汗は伴わない。症状は突然始まり,30秒~30分間持続する。
•下痢・腹痛:下痢や,消化管の蠕動運動亢進による腹痛が約80%の患者にみられる。脱水や電解質異常をきたすことがある。
•心不全(特に右心不全):約40%の患者にみられる。プラーク様沈着と心内膜線維化による右心系の弁膜症(三尖弁,肺動脈弁)を呈し,右心不全に至る。
•喘鳴・気管支痙攣:10~20%の患者にみられる。
•ペラグラ症状:ナイアシン欠乏による皮膚炎,舌炎,口角炎,下痢,昏迷・認知機能低下を呈する。
•消化性潰瘍:胃原発例ではヒスタミン産生による瘙痒感を伴う皮膚紅潮,消化性潰瘍をきたすことがある。
•カルチノイドクリーゼ:重篤な気管支攣縮や循環不全(低血圧・不整脈),精神症状(昏睡・錯乱)を呈する。精神的ストレス,飲酒,検査,がん薬物療法,麻酔,手術などで誘発される。
カルチノイド症候群を疑った場合,セロトニンの代謝産物である5-ヒドロキシインドール酢酸(5-HIAA)の24時間尿中排泄量を測定する。セロトニンやトリプトファンを豊富に含有する食品(アボカド,ホウレン草,ブロッコリー,バナナ,ナッツ類,チョコレートなど)や薬剤(アセトアミノフェン,フェノバルビタールなど)により尿中5-HIAAが高値になるため,検査前3日間はこれらの摂取を避ける。ナイアシン欠乏に伴うペラグラ症状では,血中ナイアシンを測定する。
