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骨盤外傷[私の治療]

登録日: 2026.06.10 最終更新日: 2026.06.10

原 義明 (日本医科大学千葉北総病院救命救急センター部長)

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骨盤外傷,特に骨盤骨折(本稿では主に骨盤輪骨折を指す)は,多くの受傷機転が高エネルギー外傷である。高頻度に多発外傷であり,治療の優先順位を迅速に,しかも的確に判断する能力が必要である。バイタルサインが不安定となる骨盤骨折の初期治療で重要なポイントは,止血と輸血そして固定の3つである。

▶病歴聴取のポイント

骨盤骨折ではショックや頭部外傷による意識障害,疼痛によるパニック状態などで症状を正しく伝えることができない患者は少なくない。意識がある患者の多くは「腰が痛い」と訴える。高齢者の場合,抗凝固薬,抗血小板薬の内服の有無は早期に把握したい。「血をサラサラにする薬」と記憶している患者が多い。安定型の骨盤骨折でも急激にショック状態に陥る危険がある。不明の場合は,既往ありと考えて初期治療にあたる慎重さが必要である。

▶バイタルサイン・身体診察のポイント

【バイタル】

骨盤輪骨折では血管・骨髄破綻による出血で循環血液量減少性ショック状態に陥ることも少なくない。ショック徴候による頻脈を痛みのためと誤認すると,初期治療でミスリードとなる可能性がある。不安定型骨盤輪骨折では,即時に輸血ができる準備が必要であり,不可能であれば早急に高次医療機関への転院を検討する。

【身体診察】

〈理学所見〉

プレホスピタルでは画像診断が不可能であるが,腰部周辺の激痛,下肢の肢位(外旋位),脚長差,徒手テストによる不安定性の確認,会陰部の血腫(皮下出血),受傷機転などから,危険な骨盤骨折の可能性はある程度予見できる。なお,陰囊や陰唇に現れる皮下出血は,受傷直後では明らかではないこともあり,注意を要する。

〈画像診断〉

骨盤部の単純X線撮影は高エネルギー外傷では必須であり,この画像で骨盤骨折の不安定度(≒重症度)を判断できる能力が必要である。

腎機能が低下している患者もいるが,原則は造影剤を用いたCT施行が望ましい。血管外漏出像は経カテーテル動脈塞栓術(transcatheter arterial embolization:TAE)の適応判断の重要な所見である。


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