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【識者の眼】「省察的実践家(reflective practitioner)の育成をめざして」草場鉄周

登録日: 2026.06.12 最終更新日: 2026.06.12

草場鉄周 (日本プライマリ・ケア連合学会理事長、医療法人北海道家庭医療学センター理事長)

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毎年4月には、北海道家庭医療学センターにも新人医師の入職があり、組織として彼らの成長と活躍の場を提供する責任の重さをひしひしと感じる。中でも、2026年度に総合診療専門医・家庭医療専門医をめざして入職する新専攻医は4名であり、4年にわたる研修期間を充実した修練の場にできるようにとの思いはいっそう高まる。毎年5月に、そんな彼らに対して私が提供するワークショップが、「省察的実践家をめざして」というものである。

小学校以来、知識体系を整理しながら精緻に積み上げていく作業を続け、医学部入学後は基礎医学・臨床医学の膨大な知識を包括的に学んできた若手医師たちは、その知識を現場で遺憾なく発揮したいという期待に満ちている。そして、総合診療の専門研修でも、様々なテキストを活用しながら、一つひとつの症例で実践を積み重ねていく。

しかし、総合診療の現場で独立した医師として診療にあたる際には、様々な出来事に遭遇する。そこには、これまで積み上げてきた知識ですんなり対応できるものもあれば、容易には解決策が見えない複雑で困難なものもある。その後者に遭遇した際に、どう振る舞うかが成長の鍵を握る。「面倒でやっかいなケースだ。誰かに任せよう」と回避するのか。それとも、「持てる知識と技能で、できることを尽くし、他者のサポートも得ながら、少しでも解決策を見出せないか」とあがくのか。

もし、あがくことを選択したなら、時に失敗もしながら、たまに「うまくいったな」という光明を見出すこともあるだろう。そのプロセスで「reflection-in-action(実践の中での振り返り)」を行い、得られた「生きた知」を心と体に刻み込む。そして、症例検討会やポートフォリオ(経験省察研修録)などを通じて、「reflection-on-action(実践後の振り返り)」により、その知を言語化し、長期記憶のストックとして積み上げていく。こうして生まれた「知」は、その人自身のオリジナルで、世界に唯一のものとなる。

こうした学びの積み重ねを繰り返す省察的実践家(reflective practitioner)こそが、不確実性と複雑さに満ちた総合診療の臨床現場で真に活躍する総合診療医・家庭医になるのだろう。4年間で学びが終わるわけではなく、ある意味では、学びは生涯続くと言ってもよいのかもしれない。

近年、AIの威力を実感することが多々あるが、それはまさに膨大な集合知の中から導き出される最適解である。もちろん、そこにも大きな意味がある。しかし、その集合知に対峙できるのは、やはり修練と経験の先にある人間としての固有知ではないだろうか。最近、そうした思いもあり、改めて省察的実践家をめざす専門研修の大切さを感じている。

草場鉄周(日本プライマリ・ケア連合学会理事長、医療法人北海道家庭医療学センター理事長)[総合診療/家庭医療

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