早期胃癌は,がんが粘膜内(T1a)または粘膜下層(T1b)にとどまる病変であり,リンパ節転移の有無は問わないが,そのリスクが低い場合は内視鏡治療の対象となる。日本胃癌学会の「胃癌治療ガイドライン」において内視鏡治療の絶対適応は,初版(2001年)では,「分化型・2cm以下・潰瘍瘢痕なし・T1a癌」であった。しかし,内視鏡的粘膜下層剝離術(endoscopic submucosal dissection:ESD)1)の普及により,第7版(2025年)では,「潰瘍瘢痕を伴う病変や2cm超のT1a癌,2cm以下の未分化型癌など」に適応が拡大されている。臓器温存・低侵襲性に優れ,かつ外科手術と同等の根治性を得られる内視鏡治療の適応症例が増加している。
▶診断のポイント
適応判断には正確な診断が不可欠である。白色光に加え,NBI(narrow band imaging)やBLI(blue laser imaging)などの画像強調内視鏡を用いた拡大観察によって病変の範囲の確認や質的診断を行う。潰瘍瘢痕の有無,腫瘍径,形態を精査し,必要に応じ超音波内視鏡(endoscopic ultrasonography:EUS)で深達度診断を補助する。一括切除が前提であり,分割切除では正確な病理診断や根治性が損なわれるため避ける。適応外の病変については外科と連携し,適切な治療方針を決定する。
▶私の治療方針・処方の組み立て方
基本方針は「適応を正確に見きわめ,確実に一括切除する」ことである。筆者は主にITナイフ2を用い,糸つきクリップによる牽引も積極的に活用している。高齢者や併存疾患を有する症例では,標準治療が外科手術であっても全身状態や患者意思を尊重し,相対適応としてESDを選択することがある。治療前にはリンパ節転移リスク,治癒切除の可能性,追加外科治療の可能性を具体的数値とともに説明し,患者が納得して治療に臨めるよう努めている。
