「子供望まない未婚女性64%、初めて男性を上回る─仕事と両立に苦悩」。SNSのタイムラインに流れてきたこのタイトルに、思わず目をとめた。
ロート製薬の『妊活白書2025』によれば、「将来、子どもが欲しくない」と回答した未婚女性は64.7%に達し、初めて男性(60.7%)を上回った。さらに、未婚男女が出産や育児を不安視する理由として、「経済的な負担」(男性63.2%、女性71.7%)、「キャリアへの支障」(男性51.2%、女性61.4%)は、いずれも女性で高い割合を示している。加えて、現在または将来に子どもを望む25〜44歳の既婚男女においても、「子どもを持つことでキャリアに支障が出ると感じる」(男性52.0%、女性64.1%)、「子どもを産み、育てていく上で転職や異動も視野に入れている」(男性53.3%、女性66.8%)と、同様の傾向が確認されている。すなわち、子どもを持つことによる負担や不利益は、未婚・既婚を問わず、女性により強く表れている。
背景にあるのは、女性の社会進出が進んだ現代においても、なお根強く残る性別役割分業意識である。出産や育児の負担は依然として女性に偏り、その結果としてキャリアの中断や機会の制限が生じる。これが、いわゆる「チャイルドペナルティ」である。
筆者自身も、こうした状況と無縁ではなかった。産後復帰の際、「子どもがいる人には任せられない」として主治医業務や外来を外され、積み重ねてきたものが一瞬で失われるような感覚を経験した。その後、再び業務を担えるようになると、仕事と家事・育児の双方に全力で向き合い、限界まで走り続ける日々をすごした。やがて限界に達して倒れた際には、上司から、仕事と育児の双方を含めて「貴女はすべてが中途半端」と評された。その言葉は鋭く、耐えがたい心の痛みとして今も残っている。
子どもが成長した今、この期間を振り返れば、確かに従来「王道」とされてきたキャリアからは遠かったのかもしれない。しかし、その一方で、もがきながらも自分の信じる道を進み、外科社会に影響を与える仕事がわずかでもできたとも感じている。子どものいる人生は、困難を伴いながらも、筆者にとって人生を豊かにするものであった。これほどの辛酸をなめた今も、子どもを持ったことに後悔はない。ただ、これからの若い人たちには、これほどの葛藤を抱えることなく、キャリアを築いてほしいと切に願う。
この調査結果をもって、少子化の原因を女性に転嫁する議論は少なくない。しかし、本当にそうだろうか。問題は、女性のみが「キャリアか子どもか」という選択をせまられる構造が、社会の前提となっている点にあるのではないか。
男性の視点から見ても、この構造は行動や選択を制約している。「一家の大黒柱」という役割意識は、育児への関与を制限すると同時に、過度な責任を課している。男女いずれにとっても、子どもを持つことがリスクではなく、安心して選択できる社会構造への転換が求められている。
河野恵美子(大阪医科薬科大学一般・消化器外科)[妊活白書][チャイルドペナルティ][キャリア]