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【識者の眼】「AI時代のソーシャルワーカーと『人間の尊厳』」岡江晃児

登録日: 2026.05.21 最終更新日: 2026.05.29

岡江晃児 (NTTデータライフデザインケアライフデザイナー、ソーシャルワーカー)

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医療の現場に人工知能(AI)が急速に入り込む中で、効率化と人間の尊厳はどのように両立されるべきか。本稿では、ソーシャルワーカー(SW)の実践を手がかりに、その緊張関係を考える。

1. 医療の効率化とAIの不可避な台頭

現代の医療現場において、効率化は避けては通れない課題となっている。少子高齢化に伴う医療費の増大、医療従事者の不足、さらに高度化する治療技術。これら山積する課題への対応策として、AIへの期待はかつてないほど高まっている。画像診断の精度向上や、最適な転院先の自動マッチングなど、AIがもたらすスピードと正確性は、多くの「救える命」を支えるだろう。

しかし、効率化が加速すればするほど、私たちSWは、根源的な危機感を抱かざるをえない。医療が「効率」という単一のものさしで測られてしまうことへの懸念である。

2. 「医学的価値判断」と効率化の危うい結びつき

効率化を志向するAIのアルゴリズムは、多くの場合、数値化しやすい「医学的価値判断」や「経済的合理性」に基づいている。たとえば、「この病名と年齢であれば平均〇日で退院可能」「予後から判断して、この施設への転院が最も効率的」といった判断である。医学的根拠は重要だが、人間は「疾患」だけで成り立っているわけではない。

その背後には、家族との葛藤、地域への愛着、経済的困難、あるいは「短命でも自宅ですごしたい」という切実な願いがある。AIが提示するのは「最適解」だが、それが本人にとっての「納得解」とは限らない。医学的な正しさと効率化が結びつくとき、個人の価値観や生活の文脈がノイズとして切り捨てられる危険がある。

3. 「非効率」の中に宿る「人間の尊厳」

SWの支援において重要な局面は、しばしば「非効率」な時間の中に現れる。沈黙に寄り添うこと、家族の昔話に耳を傾けること、揺れ動く意思決定を待つこと。これらは、AIの視点から見れば非効率なコストに映るかもしれない。

しかし、この非効率こそが人間の尊厳を支える。効率化のものさしを一度脇に置き、遠回りをしながら人生の文脈を紐解く過程を経てこそ、自己決定は形を成す。尊厳とは、処理される「客体」ではなく、矛盾や揺らぎを抱えた「主体」として、人生を尊重されることである。

4. SWが果たすべき役割

AI時代におけるSWの役割は、AIを否定することではない。むしろ、AIが示す効率的なプランと、本人の生活実態との間に生じる「ズレ」をとらえ、人間的な意味を補うことにある。私たちは、あえて「非効率な対話」を選択する勇気を持つ必要がある。

AIが「答え」を示すとき、SWは「問い」を立てる。「その選択の陰で諦められた思いはないか」「医学的な最善が本人の幸福を損なっていないか」と。効率化を唯一の基準とせず、数値化できない価値を守ること。それこそが尊厳を基盤とした支援である。AIという強力な道具を活用しながらも、その方向性を決めるのは常に人間である。人間の生を単純化させないことこそ、これからのSWに求められる本質的な使命である。

岡江晃児(NTTデータライフデザインケアライフデザイナー、ソーシャルワーカー)[ソーシャルワーカーAI

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