代謝性アルカローシスとは,血液中の重炭酸イオン(HCO₃−)濃度が上昇する状態を言う。主に酸(H+)の喪失またはアルカリ(HCO₃−)の過剰によって引き起こされる。
▶診断のポイント
低カリウム血症や低クロール血症(血清ナトリウム濃度−血清クロール濃度が40mEq/L以上)の際に代謝性アルカローシスを疑い,血液ガス分析によりHCO3−の濃度の上昇を確認する。引き続き,以下の原因を鑑別する。
〈酸の喪失によるHCO₃−の相対的増加〉
•嘔吐や胃液吸引による胃酸(HCl)の喪失
•水素イオン排泄の減少〔例:プロトンポンプ阻害薬(PPI)などの胃酸分泌抑制薬の使用〕
〈外因的なアルカリの負荷・供給増加〉
•制酸薬の使用(HCO₃−を含む薬剤による増加)
•炭酸水素ナトリウムやクエン酸ナトリウムなどのアルカリ化剤の投与
•乳酸(代謝によりHCO₃−を産生)を含む輸液の過剰投与
〈腎臓でのH+排泄・K+代謝異常に伴うHCO₃−の再吸収促進〉
•利尿薬(サイアザイド系利尿薬,ループ利尿薬など)の使用
•尿細管でのK+排泄亢進
•低カリウム血症(細胞内へのH+移動によりアルカローシスを引き起こす)
•ミネラルコルチコイド(アルドステロンなど)の過剰産生または作用増強(例:原発性アルドステロン症,クッシング症候群など)
〈その他の代謝性要因〉
•甲状腺機能亢進に伴う周期性四肢麻痺(細胞外K+低下に関連)
•蛋白質摂取の減少(酸性代謝産物の供給低下)
▶私の治療方針・処方の組み立て方
代謝性アルカローシスの治療は,原因となる疾患や病態の是正を優先する。
【嘔吐や胃管による胃液の喪失】
•背景となる病態の治療に加え,制吐薬を用いて嘔吐を抑制し,胃液の喪失を最小限に抑える。
•脱水が認められる場合には生理食塩水の補液を行う。
•尿中クロール濃度が10~15mEq/L未満である場合には,クロール補正を目的として生理食塩水の投与が有効である。尿中pHの上昇とともに代謝性アルカローシスの改善が期待される。
