「関節内注射や穿刺後にすぐに風呂に入ってもよいか?」は医師向けのネットでの掲示板などで繰り返し質問が掲載されてきた(表12)。「関節内注射後にすぐに風呂に入ってもよい」という意見から,「しばらくの時間は風呂やシャワーも控えるように」との意見まで様々である。しかし,関節穿刺後に注射針を抜いた後の穴から関節液が漏れ出ることは多くの整形外科医が経験しているであろう。このような場合に帰宅後にすぐに風呂に入ると,針穴から菌が皮下に侵入する可能性があると考える。さらに菌が増殖すれば筆者のクリニックでの感染自験例4例目のように皮下から関節腔内へ感染が波及する危険性があり得る。
強力なバリアーである皮膚や関節包に穴が開いた状態であり,細菌感染の広がりは急速かつ強力であることから,筆者はやはり注射後は一定時間風呂やシャワーを使用しないほうが安全と考えている(表13)。水圧のかかる風呂とそうでないシャワーでは危険性が少し異なるが,高齢の患者は風呂とシャワーの区別を忘れやすいので筆者も看護師も患者に対する説明は風呂の場合に統一している。糖尿病がない患者にはヒアルロン酸の関節内注射後には12時間,ステロイドホルモンなら24時間,太い注射針を用いた場合はやはり24時間は風呂やシャワーを禁止している。糖尿病患者にはヒアルロン酸注射や太い注射針での穿刺後は風呂やシャワーを24時間禁止し,ステロイドホルモンは注射しない。

(本稿は,井尻慎一郎著『【トラブル対策】関節内注射の合併症対策』の一部を抜粋・編集したものです。)
