日本で暮らす外国人が増加している現在、医薬品の扱いに関しても特別な注意や配慮が求められる場面が増えています。日本人とは宗教や風習が異なるだけでなく、遺伝的素因によって薬の有効性や安全性が大きく変わるケースも少なくないからです。
たとえば、厳格なイスラム教徒の患者の場合、豚などの動物由来原料が用いられている「ヘパリン類似物質」や「ゼラチン」を避けたほうがよい場合があります。特に「ゼラチン」はカプセル剤やゼリー剤に使われていることが多いため、うっかり処方・調剤してしまわないよう注意が必要です。なお、近年は「ゼラチン」を使っていない製剤も増えています。
具体的には、ネキシウム®カプセルではヒプロメロース(植物由来)、アリセプト®内服ゼリーではカラギーナン(海藻由来)、イソソルビド内服ゼリー「日医工」では寒天(同じく海藻由来)が使用されています。このような製剤を確認するためには、添付文書の“添加物”欄をしっかり確認することが重要です。
また、日本人と外国人では薬の効き方に大きな違いが現れることもめずらしくありません。たとえば、日本人をはじめとする東アジア系の人は、抗血小板薬「プラスグレル」の生物学的利用能(バイオアベイラビリティ)が高いことが知られています1)。そのため、日本で承認されている用量は欧米の約3分の1と少なく設定されていますが、この用量をそのまま欧米人に当てはめると過少投与になってしまう恐れがあります2)。
逆に、日本人では比較的安全に使えてOTC医薬品などにもよく配合されている「コデイン」ですが、代謝酵素CYP2D6のultrarapid metabolizerが多い外国人では、モルヒネ中毒のリスク3)をより慎重に考慮する必要があります。
多様な国と地域からの外国人が日本で生活する時代となった今、こうした薬に関する国際的な違いにも改めて注意を払い、安全かつ効果的な薬物治療の実現を心がけていきたいところです。
【文献】
1) Small DS, et al:Eur J Clin Pharmacol. 2010;66(2):127-35.
2) 親川拓也, 他:日冠疾会誌. 2021;3:1-5.
3) Gasche Y, et al:N Engl J Med. 2004;351(27):2827-31.
児島悠史(薬剤師/Fizz-DI代表)[薬剤師][外国人患者]