前稿(No.5318)に引き続き、2026年診療報酬改定におけるプライマリ・ケアとの関連が大きいテーマを取り上げたい。前稿では外来診療を扱ったが、本稿では在宅医療を取り上げる。
在宅医療は、もともと「往診」という位置づけで提供されてきた。1981年に訪問診療料、1984年に緊急往診加算の算定が認められたものの、その報酬は低く、あくまで外来診療の付加的な位置づけにとどまっていた。正直なところ、そこにかかる時間や負担を考慮すると、採算は取りづらいものであった。
しかし、2006年に在宅時医学総合管理料が創設され、大幅な報酬増となったことで、在宅医療を診療の中核に位置づけても十分に採算が取れる状況となった。これにより、いわゆる「在宅専門クリニック」が徐々に増加していった。
その後も在宅医療には一貫して診療報酬上の追い風が吹いてきた。しかし、大都市部を中心に、数百人〜千人規模の患者を抱える「メガ在宅クリニック」に注目が集まるようになり、これに対する報酬の引き下げが行われた。一方で、ターミナルケア、神経難病、医療的ケア児など、診療負担の大きい患者への評価は十分とは言えず、軽症患者と重症患者の診療をいかに差別化するかが課題であった。
今回の改定では、この点に大きくメスが入ったと言える。まず、在宅時医学総合管理料の算定において、月2回以上訪問する患者については、「重症者が一定割合以上であること」が要件化された。これにより、医療依存度の高い患者を積極的に診療している医療機関が評価される方向性が明確になった。また、従来の在宅緩和ケア充実診療所・病院加算が廃止となり、約2倍の報酬となる在宅医療充実体制加算が新設された。ただし、緊急往診や看取りの実績基準は引き上げられ、重症患者割合2割以上、医師1人あたりの訪問患者数100名以下といった要件が課されている。
すなわち、在宅医療の量的拡大ではなく、質の向上を評価する方向性がより明確になったと言える。これは、医療の質にこだわってきた多くのプライマリ・ケア医療機関にとって、追い風であろう。
最後に、この在宅医療充実体制加算の要件に加えられた「医師等の教育実績」に注目したい。過去2年度にわたり在宅医療に関する教育に従事していることが求められ、具体的には、医学部の地域医療実習、臨床研修医の地域医療研修、内科・総合診療・小児科の専門研修、地域枠医師の受け入れのいずれかが必須とされている。
つまり、単に高度な在宅医療を提供するだけでなく、後進の育成に取り組むことが今後は求められることとなった。これは、これまでボランティア的に教育に関わってきた全国の在宅医療機関にとって大きな後押しであり、日本プライマリ・ケア連合学会が支援する総合診療専門研修にとっても追い風となるだろう。さらに、「教育実績」が診療報酬の要件に組み込まれたこと自体、エポックメイキングな変化と言えるのではないか。学会としては、外来診療においても教育を要件とする診療報酬の枠組みが導入されることを期待したい。
以上のように、2026年改定は、今後の医療提供のあり方に重要な方向性を示した改定であった。ぜひ、日々の診療に役立てて頂きたい。
草場鉄周(日本プライマリ・ケア連合学会理事長、医療法人北海道家庭医療学センター理事長)[総合診療/家庭医療]