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ウエストナイル熱・脳炎[私の治療]

登録日: 2026.04.06 最終更新日: 2026.04.06

倭 正也 (りんくう総合医療センター総合内科・感染症内科主任部長兼感染症センター長)

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ウエストナイル熱は,日本脳炎ウイルスと同様にフラビウイルス属のウエストナイルウイルスによる感染症である。主に蚊を介してヒトに感染し,発熱や脳炎を引き起こす。イエカやヤブカなど60種類以上の蚊が媒介可能である。蚊はウイルス血症を起こした鳥を吸血することにより感染し,感染した蚊に刺されることでヒトや動物に伝播する。ヒトは最終宿主であり,ヒトから蚊への伝播はない。また,輸血,臓器移植,母乳を介した感染などの特殊な場合を除き,ヒトからヒトに感染することもなく,感染患者からの感染拡大はない。
ウエストナイルウイルスは,1937年にウガンダのWest Nile地方の発熱患者から初めて分離された。その後、北米,アフリカ,欧州,中東,中央アジア,西アジア,豪州など世界の広い地域で発生が確認されている。北米では毎年夏季に流行がみられ,米国では年間約2000人の患者発生報告がある。マラリアとは異なり,都市部でも感染の可能性がある。本疾患は,日本では感染症法に基づき4類感染症に分類されている。日本国内での報告例は,2005年9月に米国ロサンゼルスから帰国した1例のみである。

▶診断のポイント

【症状】

症状が出るのは約20%で,多くの感染者は無症状あるいは感冒症状のみであるが,潜伏期間である発症の2~14日前に流行地域への渡航歴があり,39℃以上の突然の発熱,頭痛,背部痛,筋肉痛,食欲不振,リンパ節腫脹などの症状がみられた場合には,本疾患を疑う。発熱は通常3~6日間持続する。約半数の症例で,デング熱のように回復期に胸部,背部,上肢などに発疹がみられる。症状は通常1週間以内に回復するが,その後倦怠感が残ることがある。激しい頭痛,項部硬直,意識障害,痙攣,麻痺,筋力低下などの重篤な症状(ウエストナイル脳炎)を呈するのは感染者の約1%(主に高齢者)であり,致死率は重症患者の3〜15%と言われる。脈絡網膜炎,肝炎,心筋炎が生じることもある。

【検査所見】

頭部MRI検査では,典型例で視床,中脳,大脳基底核に異常所見を認めるが,これに該当しない症例の報告も多い。脳炎を呈している患者では全般性の徐波を認め,特に前頭葉,側頭葉で著明である。急性弛緩性麻痺を呈した患者では知覚神経の伝導は正常であるが,運動神経の伝導の低下が認められる。

【診断】

確定診断は,検査材料として血液,脳脊髄液を用いることによるウイルス分離・同定による病原体の検出,RT-PCR法によるウイルスRNAの検出,特異的IgMの検出,特異的IgG(中和法で確認する)のペア血清における4倍以上の上昇により行われる。ウイルス分離は発病早期の血液または脳脊髄液から可能である。注意点として,特異的IgM,中和抗体とも日本脳炎ウイルスと交叉するため,日本脳炎ウイルスに対するよりも高値であることを確認する必要がある。また,特異的IgMにおいてもペア血清で上昇を確認することが望ましい。これらの検査は国立感染症研究所で実施可能である。

【届出】

本疾患は感染症法における4類感染症に指定されており,症状・所見および病原学的または血清学的診断に基づき診断した医師は,直ちに最寄りの保健所へ届出を行うことが義務づけられている。


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