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【識者の眼】「女性総理大臣誕生と『見えない壁』:参政権80年後の課題」河野恵美子

登録日: 2026.04.08 最終更新日: 2026.05.07

河野恵美子 (大阪医科薬科大学一般・消化器外科)

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2025年、わが国で初めて女性総理大臣が誕生した。この出来事は、日本政治の歴史における大きな転換点である。数年前まで、「日本で女性総理大臣が誕生する日が来る」と現実的に考えていた人は決して多くはなかっただろう。

米国では、Hillary ClintonやKamala Harrisが大統領選に挑戦しながら、あと一歩のところで頂点には届かなかった。Hillary Clintonが語った“Although we weren’t able to shatter that highest, hardest glass ceiling this time, thanks to you, it’s got about 18 million cracks in it”という言葉は、多くの人の心に深く刻み込まれている。

ジェンダー平等が進んでいるとみられてきた米国よりも先に、日本で女性の国家指導者が誕生したという事実は、従来の国際的なイメージを覆すものである。

女性の政治参加の歴史を振り返ると、女性参政権が議会で正式に認められたのは1945年12月15日である。翌1946年4月10日に実施された第22回衆議院議員総選挙で、日本人女性は初めて国政選挙で参政権を行使し、39人の女性国会議員が誕生した。当時の女性議員比率8.4%は世界でも非常に高い水準であった。しかし、80年後の現在、その割合は19.8%(2026年2月時点)まで上昇したものの、各国でジェンダー平等がさらに進んだ結果、G7諸国の中では最下位に位置している。

新たな女性指導者に対しては、「名誉男性(女性でありながら、既存の男性中心的な価値観や権力構造を強く擁護・内面化していると見なされた女性)」といった揶揄が向けられることもある。しかし、個々の政治姿勢への評価とは別に、女性が国家の最高意思決定の座に就いたという事実そのものが、社会に与える象徴的意味は決して小さくない。見えない壁を越えた先例は、次の世代にとって現実的な目標となる。

もっとも、こうした課題は政治の世界に限らない。医療界も同様の構造を色濃く残している分野のひとつである。日本外科学会は1899年に発足し、127年を経た現在に至るまで、女性理事長は誕生していない。女性医師数は着実に増加しているにもかかわらず、学会の最上位の意思決定層に至るまでには、なお見えない壁が存在している。

女性総理大臣誕生という、この歴史的な出来事を、持続的な変化へとつなげられるかどうかが問われている。政治のみならず、医療、教育、企業などあらゆる分野で、形式的な参画にとどまらず、意思決定の中枢に多様な人材が関与できる環境を整えることが求められている。そのためには、制度の整備だけでなく、組織文化や評価のあり方そのものを見直す視点が欠かせない。女性総理大臣の誕生を契機として、真のジェンダー平等に向けた議論と実践が一段と進展することを期待したい。

河野恵美子(大阪医科薬科大学一般・消化器外科)[外科医][ジェンダー平等

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