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【識者の眼】「難聴への介入は認知症予防の最優先課題か─ACHIEVE試験から日常診療を考える」内田直樹

登録日: 2026.04.01 最終更新日: 2026.04.16

内田直樹 (医療法人すずらん会たろうクリニック院長)

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Lancet Commissionの認知症予防に関する報告(2024年改訂版)で示された14の修正可能なリスク因子のうち、日本人における寄与度を推計した研究が最近発表された1)。それによると、日本では認知症の約39%が理論上予防可能であり、中でも最も寄与度が大きい因子は難聴(6.7%)であった。

難聴が認知機能低下に関与する機序としては、主に以下の3つの経路が想定されている。

•第一に、聴覚入力の減少による脳への感覚刺激の低下

•第二に、聞き取りに過度な認知リソースが割かれ、記憶や思考に充てる余力が減少すること

•第三に、聞こえにくさが会話への参加を妨げ、社会的孤立につながること

これらの要因が相互に関連しながら、認知機能低下を加速させると考えられている。

介入のエビデンスとして注目されるのが、米国で行われたACHIEVE試験である2)。70〜84歳の難聴高齢者977名を対象としたこの無作為化比較試験では、補聴器の装用と聴覚リハビリテーションによる介入が行われた。全体では認知機能低下の有意な抑制は認められなかったものの、心血管リスクなど認知症のリスク因子を併せ持つ層では、3年間で認知機能低下が48%抑制されたと報告されている。つまり、リスクの高い患者ほど介入の恩恵が大きい可能性を示唆する結果と言える。

一方、在宅医療の現場では、補聴器を所有しながら使用していない患者に遭遇することが少なくない。「煩わしい」「合わない」といった理由で、引き出しにしまったままになっているケースも多い。外来では聞き取れていても、生活の場ではテレビの音量が極端に大きくなっている場合もある。静かな診察室と生活の場では聴覚負荷が大きく異なるため、こうした症例こそ早期の補聴器導入が脳の負担軽減に寄与すると考えられる。

ただし、補聴器は装用開始後も繰り返しの調整が必要であり、脳が新しい聴覚入力に順応するまでには時間を要する。この点を丁寧に説明し、継続的な使用を支えることが、介入の効果を引き出す上で欠かせない。認知症のリスク因子を複数持つ患者ほど、聴力への介入による恩恵は大きい。耳鼻咽喉科との連携を強化し、日常診療の中で「聞こえ」の問題をより積極的に拾い上げていくことが重要である。

【文献】

1) Wasano K, et al:Lancet Reg Health West Pac. 2026;66:101792.

2) Lin FR, et al:Lancet. 2023;402(10404):786-97.

内田直樹(医療法人すずらん会たろうクリニック院長)[認知症予防][ACHIEVE試験

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