原発性心臓腫瘍は比較的稀な疾患であり,スクリーニングの心エコーなどで偶発的に見つかることが多い。また,腫瘍による血流障害に起因する心不全や塞栓症などを契機に診断されることもある。最も頻度が高いのは良性腫瘍である粘液腫であり,手術を行えば予後は良好である。一方,肉腫などの悪性腫瘍は手術を行っても予後は不良である。
▶診断のポイント
【症状】
心臓腫瘍,特に頻度の高い心臓粘液腫は発熱,体重減少,筋肉痛,関節痛,筋力低下など不定愁訴を呈することが多いと成書には記載されている。しかし,実臨床では腫瘍が3cm以下と小さい場合には,腫瘍による塞栓症状を呈するケース以外は無症状であることがほとんどである。心臓粘液腫の好発部位は左房で,ついで右房である。左房に発生する巨大左房粘液腫では僧帽弁狭窄症様の症状,すなわち息切れや呼吸困難などを呈する。一方,右房に発生する巨大右房粘液腫は三尖弁狭窄症様の症状,すなわち全身浮腫やうっ血肝を生じうる。きわめて巨大な心臓腫瘍は,弁や肺動脈への嵌頓などで突然死をきたしうる。心臓粘液腫以外の良性心臓腫瘍は,心腔内狭窄をきたすほど増大することは稀であり,塞栓症状が多い。一方,悪性心臓腫瘍は急速に増大する確率が高く,進行性の心不全をきたすことが多い。
【診断】
多くの場合,スクリーニングを目的とした経胸壁心エコー検査で偶発的に発見される。しかし,心不全症状の精査のための経胸壁心エコー検査で発見されることもある。手術を行う場合,経食道心エコー検査は腫瘍の付着部位の同定,可動性の有無,正確な大きさの計測などにきわめて有用である。腫瘍の付着部位の判定や正確な大きさの計測などには,心電図同期造影CT検査も有用である。MRI検査は,心筋内に伸展した線維腫や脂肪腫の診断には有用な場合もあるが,必ずしも必要な検査ではない。また,冠動脈造影検査は,冠動脈狭窄の合併などを強く疑う場合には有用であるが,術前検査としては冠動脈CT検査で事足りることが多い。
