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放射線被ばく[私の治療]

登録日: 2026.03.04 最終更新日: 2026.03.04

長谷川有史 (福島県立医科大学医学部放射線災害医療学講座教授)

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全身に1Gy(グレイ)以上の急性放射線被ばくを受けた場合,DNA損傷を緒とする細胞死から線量依存性に造血器・消化器・中枢神経系などの多臓器不全(multiple organ failure:MOF)をきたす場合があり,急性放射線症候群(acute radiation syndrome:ARS)と呼ばれる。一方,被ばくが局所で,障害臓器が皮膚軟部組織に限定される場合を局所放射線障害(localized radiation injury:LRI)と呼ぶ。汚染(放射性物質の新たな付着・体内取り込み)は被ばくの一因となる。体表面汚染(外部汚染)は愛護的に除去し,体内取り込み(内部汚染)は中毒治療に準じて対応する。

▶病歴聴取のポイント

「放射線被ばく」の存在を疑うことが重要である。 ①テロ・特殊災害や病院放射線事故などの被ばく・汚染事象,②「悪心・嘔吐,下痢,頭痛,発熱,意識障害」(前駆症状)の有無を聴取する。被ばく後48時間以内に前駆症状を認めた場合は入院を考慮する。原因不明のMOFで,上記①②に原因不明の急激な血球数減少(被ばく48時間後リンパ球数 < 1000/μL)を伴う場合は,ARSを鑑別に挙げる。また,原因不明の難治性の局所皮膚障害ではLRIを鑑別に挙げる。

▶バイタルサイン・身体観察のポイント

放射線被ばくのみでは,バイタルサインに異常を呈さない。急性期にバイタルサインの異常を認めた際は,被ばく以外の原因を検索する。

前駆症状(上述)のうち,特に「嘔吐」の有無が高感度で最重要である。前駆症状は出現時間の早さと被ばく線量が逆相関するので,発症時間を記録し線量推計に供する。ARSでは、被ばく後48時間以降に前駆症状が消退し,以後2週間程度の無症候期間(潜伏期)を経た後にMOFを発症するという特徴的な臨床経過をたどる。


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