小児に対する在宅医療のニーズは高まっている。長期療養が必要になったときには,成人より小児のほうが,自宅で家族とともに過ごす必要性があるのは論を俟たないであろう。しかしながら,小児科医あるいは小児を専門的にみる在宅医はほとんどいない。ニーズは高まってきているものの,絶対数としては成人に比較して圧倒的に少ないため,成人の在宅医が小児在宅医療を担わなければならない状況となっている。
成人に対する在宅医療と小児に対する在宅医療,その大きな相違点は,前者の多くは「思い出をたどる医療」であるのに対して,後者は「思い出を紡ぐ,思い出を創る医療」ということである。さらにつけ加えるなら「奇跡を信じる医療」でもあるように思われる。
▶代表的症状・検査所見
小児の在宅医療の対象となる疾患,状況は大きくわけて3つのケースがあると思われる。
①小児がん治療中,治癒後の小児
以前は非常に予後の悪かった小児がんであるが,治療法の進歩とともに治癒率が向上し,国立がん研究センターのデータでは,なんと80%の治癒率となった。このような状況のもと,入院だけでなく外来通院での治療,経過観察が増えており,それに伴い在宅での栄養管理,リハビリテーション,全身状態を良好に保つための工夫など,在宅医療の果たす役割も大きくなっている。
②がん末期患児の看取り
治癒率が向上しているとはいえ,亡くなってしまう子どもがいるのは事実であり,たとえそれが運命だとしても,最期は自宅で両親や家族のもとでと考えるのは,自然なことだと思われる。
③いわゆる医療的ケア児と称される子どもたち
早産や出生時の合併症,筋ジストロフィーなどの難病,何らかの障害などで,日常的に医療的なケア(医療行為)が必要な子どもたちがおり,まさにその医療行為に,在宅医が関わっている。
上記の①,③のケースの場合,患児が成人しても,在宅医はそのまま医療を提供していく必要がある。
