「住み慣れた自宅で最期まで過ごしたい」。これは、鹿児島県徳之島北端で民宿を営み、難治性がんと向き合う男性の切なる願いだ。20km以上離れた病院への通院負担を鑑み、私たちは訪問診療を行っている。
かつて私は、1000床を超える巨大病院で緩和医療の研鑽を積み、一通りの問題には対処できると天狗になっていた。5年前、ふとした御縁があって、離島での緩和ケアアウトリーチのお話をいただいた。このプロジェクトは、田上恵太氏(現・悠翔会くらしケアクリニック練馬院長)をリーダーとして、島には不在の緩和医療専門医が月に1度訪れ、チーム回診や訪問診療を行うというものだった。自分の力を発揮できるなら、と私は「力試し」のつもりで、驕った気持ちのまま参加を表明したのだ。