検索

×
絞り込み:
124
カテゴリー
診療科
コーナー
解説文、目次
著者名
シリーズ

【識者の眼】「高齢化と人口減少が進む中での病院機能の変化」小野 剛

登録日: 2026.02.24 最終更新日: 2026.02.24

小野 剛 (市立大森病院院長、全国国民健康保険診療施設協議会会長)

お気に入りに登録する

高齢化と人口減少が全国でも先行して進んでいる秋田県では、外来・入院患者数の減少が続いている。これに加え、物価高や人件費の上昇も重なり、病院経営は厳しさをいっそう増している。

2005(平成17)年の市町村合併、いわゆる「平成の大合併」により、同一市内に2つの自治体病院を抱えることになった3市(大館市、仙北市、横手市)のうち、2市で病院運営に苦慮し、2病院のうち1病院を無床診療所とする方向で検討が進められていることが明らかになった。県北部の大館市では市立扇田病院を2027年度から、県南部の仙北市では市立田沢湖病院を2028年度から無床診療所とする方針が示されている。両市に共通する背景として、病院事業の慢性的な赤字に加え、近年の外来・入院患者数の減少、物価高に伴う材料費や委託費の高騰、人件費の上昇により赤字額が急激に拡大し、資金不足比率が上昇して市の財政を圧迫しているという点が挙げられる。

人口減少が進行する地方では民間医療機関が少なく、多くの地域で自治体病院が地域医療を支えるとともに、不採算医療を担ってきた。その一方で、多くの病院は自治体からの財政支援を前提として運営されてきた。しかし、ここ数年は自治体の財政状況自体も厳しくなっており、従来と同様の病院支援を継続することは難しいのが現状である。とりわけ、1つの自治体で複数の病院を維持することは、もはや困難な時代になりつつあるのではないかと感じている。

2019年9月、厚生労働省は全国の公立・公的病院のうち、再編・統合に向けた議論が必要とされる424病院を公表した。当院もその1つに含まれており、当時、地域住民の困惑が大きかったことを記憶している。それから6年が経過し、同じ県内で複数の中小規模自治体病院が無床診療所に移行する状況を目の当たりにすると、人口減少が進む地方では病院が淘汰される時代に入ったことを実感せざるをえない。近年では小児科や産科を休止する病院も増えてきている。地域住民にとって、身近な病院で入院治療が受けられなくなることへの不便さや不安は大きいが、地域の実情によって病院の医療機能が変化する可能性があることについて、一定の理解を得ていくことも必要ではないだろうか。

一方で、公立病院側の経営努力も不可欠である。旧態依然とした病院運営では立ち行かなくなることは明らかであり、地域の人口動態や医療ニーズの変化に柔軟に対応する姿勢が求められる。人口減少が進む地方において、次世代に向けて持続可能な地域医療提供体制を構築し、維持していくことは喫緊の課題である。医療提供体制の再編や撤退、縮小といった戦略を検討すべき時期は、まさに「今」である。

小野 剛(市立大森病院院長、全国国民健康保険診療施設協議会会長)[医療機能][医療提供体制

ご意見・ご感想はこちらより


1