飛蚊症は,視界に点状,糸くず状,クモの巣状などの影が見える症状を指す。その形状は多様で,患者の訴えの程度も様々である。眼球を動かすと影も一緒に移動するため,虫が飛んでいるように感じることもある。硝子体の混濁が網膜に投影されて影を落とすために生じ,特に明るい場所や白い背景で自覚しやすい。多くの場合は硝子体の生理的変化に起因する生理的飛蚊症である。若年者の場合は近視眼の硝子体の液化に伴う線維性混濁が原因となることが多く,中高年者では加齢に伴う後部硝子体剝離によるものが多い。しかし,網膜裂孔や網膜剝離,硝子体出血,ぶどう膜炎など,眼疾患に起因する病的な飛蚊症もあるため鑑別を要する。
▶診断のポイント
【原因】
飛蚊症の訴えがあった場合,詳細な問診と眼底検査を行い,まず生理的飛蚊症と病的飛蚊症との鑑別を行う。特に網膜裂孔,網膜剝離は早急に処置を要するため,見逃さないよう眼底周辺部まで詳細に観察する。一般に影の数が多く,範囲が広いほうが病的飛蚊症のリスクがより高い。以下に主な飛蚊症の原因を挙げる。
〈生理的飛蚊症〉
・生理的変化によるもの:後部硝子体剝離,硝子体液化,星状硝子体症
〈病的飛蚊症〉
・網膜の物理的変化によるもの:網膜裂孔,網膜剝離
・硝子体出血によるもの:糖尿病網膜症,網膜静脈閉塞症,眼外傷など
・炎症によるもの:ぶどう膜炎,感染性眼内炎など
・薬剤によるもの:抗癌剤,抗甲状腺薬,硝子体注射薬による硝子体混濁など
・悪性腫瘍によるもの:眼内悪性リンパ腫など
【問診】
鑑別診断を意識しながら下記のポイントについて詳細な問診を行う。
・飛蚊症を初めて自覚した時期,形状,数,動き,変化
・片眼か両眼か
・視力低下,光視症,視野欠損の有無
・眼疾患,内眼手術,硝子体注射,眼外傷の既往
・全身疾患(糖尿病,高血圧,悪性腫瘍など)の既往歴,使用中の薬剤
【検査】
下記の眼科的検査を行う。必要に応じて全身検査を追加する。
・屈折,矯正視力検査:視力低下の有無,強度近視の有無(強度近視眼は硝子体液化,網膜裂孔のリスクが高い)
・眼圧測定:炎症性疾患,網膜剥離では眼圧の変動を認めやすい
・細隙灯顕微鏡検査:前房深度,前房炎症の有無
・眼底検査:散瞳下で行い,眼底の最周辺部まで確認する。飛蚊症を自覚する眼のみではなく,両眼の検査が望ましい。必要に応じて,接触型レンズを用いた眼底検査,眼底カメラ撮影,光干渉断層撮影(OCT),超音波検査,蛍光眼底造影検査などを併用する
