「心臓が悪いために,息切れやむくみが起こり,だんだん悪くなり,生命を縮める病気」と定義される1)。超高齢社会のわが国では,心血管病の最終病型として激増している。高い死亡率とADL,QOLの低下に加え,急性増悪による再入院が多い。繰り返しの入院は,病態の悪化を加速させ,逼迫した医療環境に大きな負担となる。
▶診断のポイント
息切れ,中でも発作性夜間呼吸困難は重症例での典型症状である。身体所見として,頸静脈怒張の特異性が高く,立位時の頸部皮膚の揺れとして認識される。血液検査では,BNP 100pg/mL以上,NT-proBNP 300pg/mL以上は心不全の可能性が高い。
▶私の治療方針・処方の組み立て方
心不全治療,中でも薬物療法は,症状を良くする「目に見える治療」と,(個別では実感できない)予後を改善させる「目に見えない治療」の大きく2つにわかれる(図)2)。症状を良くする治療の中で,うっ血を解除させるための利尿薬は左室駆出率(LVEF)の数値によらず使用される。一方,予後を改善させる治療では,LVEFにより推奨される薬剤類が異なる。LVEF 40%未満に低下した心不全(HFrEF)では,アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬/アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)/アンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬(ARNI),β遮断薬,ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MRA),SGLT2阻害薬で予後改善が示されている。LVEFが軽度低下した心不全(HFmrEF)やLVEFの保たれた心不全(HFpEF)で予後改善を示しているのはSGLT2阻害薬のみである。

