地域の小病院が置かれている環境は厳しい。人口減少、医療従事者不足、物価高騰。これらはいずれも構造的な問題であり、個々の病院の努力だけで解決できるものではない。2026年度診療報酬改定の短冊を眺めていると、国のメッセージは比較的明確である。「すべての医療機関が、すべての医療を担う時代は終わった」ということだ。
今回の改定では、急性期・地域一般・包括期・在宅といった機能分化を前提に、評価体系がより精緻化されている。特に注目すべきは、「人口の少ない地域で医療を連携して確保する」ことへの評価や、「急性期総合体制」「救急外来機能」への再評価である。これは、小病院が単独で高度急性期をめざすのではなく、地域の中で役割を明確にし、その役割を果たすことに対して報いる、という設計思想と読むことができる。
では、地域の小病院が担うべき救急医療とは何か。答えは「何でも来い」ではない。一次・二次救急の受け皿として、断らずに診ること、そして必要な患者を適切なタイミングで次につなぐことである。今回の改定で救急外来医療の評価が再編され、救急患者連携搬送料が見直されたことは、救急を「完結させる場」ではなく「ハブ」として位置づけ直したと解釈できる。
重要なのは、人を増やすことではなく、機能を絞ることである。夜間・休日を含めた救急体制を維持するには、ICTやタスク・シフティングの活用が不可欠であり、今回の改定でも医師事務作業補助、看護業務の効率化、多職種協働への評価が繰り返し示されている。これは、「医師がすべてやる救急」からの脱却を意味している。
さらに、小病院にとって在宅・施設の後方支援機能は、救急医療と表裏一体である。短冊では、緊急入院の受け皿や在宅患者の後方支援が、より明確に評価されているように見える。救急搬送を減らすことと、救急を断らないことは矛盾しない。普段から顔の見える連携を構築し、「困ったらあそこに相談できる」という関係性を地域でつくることが、結果として救急医療を守る。
地域の小病院が生き残る道は、「全部を抱え込む」ことではなく、「役割を引き受ける」ことである。救急を担保するとは、重症患者を抱え続けることではない。地域にとって必要な医療の入口であり続けること。その覚悟と選択こそが、これからの小病院に求められている。
薬師寺泰匡(薬師寺慈恵病院院長)[診療報酬改定][短冊][機能分化]