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【識者の眼】「これからの15年、高齢者という人口ボーナスを生かせ」森井大一

登録日: 2026.02.10 最終更新日: 2026.03.03

森井大一 (日本医師会総合政策研究機構主席研究員)

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2025年11月に日医会館で行われた清家 篤先生(日本赤十字社社長)の講演は、単に社会保障のみならず、日本の行く末を照らすものだった。ここに筆者の解釈を交えつつ、そのエッセンスを採録する。

現在、約7000万人の日本の労働力人口は、このまま何もしなければ2040年には約6000万人にまで減る。これでは、我々の経済社会を維持することは不可能だ。これに抗うため、従来「定年」と考えられていた60歳や65歳を超えた“高齢者”人口の労働参加が重要になる。

高齢者の労働参加が最もうまく進展したシナリオでは、2040年でも約6800万人の労働力人口を確保できるという。この際、数字そのものにはさしたる意味はない。重要なのは、高齢者の労働参加によって、労働力人口を相当程度維持できるという点だ。既に、21世紀に入って以降、65歳以上の働き手は倍増した。また日本は、G7の中でも突出して高齢者の労働意欲が高い国である。まだまだ高齢者の労働力人口は眠っている。全体の人口が減り、高齢人口はまだ増えるのだから、高齢者こそが人口ボーナスだ。これを活用しない手はない。

労働者の数は、言うまでもなくモノ・サービスの生産を規定する重要な説明変数である。しかしそれだけでなく、高齢者は消費者でもある。

労働者が少しでも長く働くためには、健康を維持する必要がある。健康寿命の延伸だ。幸いにして、日本の健康寿命は延び続けている。この調子を維持しなければならない。高齢者が働くところまでいかなくても、元気であればあるほど消費性向は高くなる。だから、健康寿命を延ばせば、生産だけでなく消費も増える。高齢者は、これからの日本のマクロ経済を、需要と供給の両面から支える存在になる。

元気な高齢者は、資金の支え手としても重要だ。日本の金融資産の6割以上は、60歳以上が保有している。社会保障を壊せば、資産を保有する高齢者は、その積極的な運用を敬遠し、自分の生活保障のための貯蓄とみなすようになるだろう。また、認知機能障害のある保有者の資金の積極的な運用には制限がある。逆に言えば、社会保障が維持されているという条件のもとで、元気な高齢者は社会にとって資金の支え手になるが、元気のない高齢者の資金は社会にとって活かされる道を断たれる。

では、どうやって元気な高齢者を増やすか。そのためには、医学の果実を確実に国民に届け、日常からプロの医療者が国民の健康管理にコミットする必要がある。その意味で医療は、費用というより投資だ。ちゃんとリターンが想定されている。

介護も同様に、労働力人口を維持するための投資である。現在、約300万人が仕事をしつつ家族の介護をしており、そのうち毎年10万人超が離職を余儀なくされている。その経済損失は2030年には9兆円にも上ると推計される。介護離職を防ぐことの経済効果も大きい。

森井大一(日本医師会総合政策研究機構主席研究員)[高齢者][労働力社会保障][介護離職

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