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自宅療養者への感染症対応(新興感染症を含む)[私の治療]

登録日: 2026.02.09 最終更新日: 2026.02.09

宮本雄気 (よしき往診クリニック,京都府立医科大学救急医療学教室)

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在宅医療における感染症対応は,細菌感染症への対応,新型コロナウイルス感染症(COVID-19)などに代表される新興感染症(特にウイルスによる呼吸器感染症)への対応,施設クラスターなどを含む感染制御など,多岐にわたる。一般的な病態・治療などは別稿にゆずり,本稿では「細菌感染症への対応」「COVID-19への対応(施設クラスター対応を含む)」について,在宅医療,特に高齢者に対する在宅医療提供時に特徴的なポイントを中心に解説する。

Ⅰ.細菌感染症への対応

▶代表的症状・検査所見

在宅医療を受けている高齢者においては,発熱や臓器特異的症状が顕在化せず,倦怠感・食思不振・転倒・軽度の意識障害などが初期症状のこともある。介護者や他のメディカルスタッフの「いつもと様子が違う」という言葉に耳を傾け,感染症による症状ではないかと疑いの目を持つことは重要である。

なお,一般的な感染症診療と同様に,在宅医療であっても感染臓器および起因菌を想定した上で抗菌薬を使用するという原則は変わらない。また,感染臓器に関与する培養検査も可能な限り実施すべきであると筆者は考える。さらに,菌血症・敗血症を疑う場合や,明確な感染臓器や起因菌が不明な場合において,筆者は血液培養検査も積極的に実施している。ただし,これらの培養検査は患者の苦痛を伴うこともあるため,特に人生の最終段階にある患者に対しては,検査の実施によって得られるメリットと苦痛などのデメリットを十分に勘案し,時に患者本人や代理意思決定者とともに検査実施の是非について検討する必要がある。

▶治療の考え方

在宅医療では病院医療と大きく異なり,「内服コンプライアンス」あるいは「点滴静脈注射の実施回数」も抗菌薬の選択に大きく関わる。これは訪問看護の人的資源や家族の協力の有無によって判断されることが多い。

たとえば,胆管炎を疑った腎機能低下のない患者に対し,アンピシリン・スルバクタム(ABPC/SBT)の点滴投与を検討した場合,1日3~4回の訪問が必要となり,現実的には難しいこともある。そのため,想定した起因菌に対するスペクトラムを有する限り,偽胆石・胆泥のリスクはあると理解しながらも,1日1回の投与が可能なセフトリアキソン(CTRX)を選択することもある。同様の事象は内服薬でも生じる。アモキシシリン・クラブラン酸の投与は通常1日3~4回となるが,独居かつ認知症を有する患者に対しては良好な内服コンプライアンスが望めない。このような場合,1日1回の内服でよいレボフロキサシン(LVFX)を選択し,訪問看護による服薬介助を指示することもある。ただし,CTRXやLVFXのような投与回数の少ない抗菌薬は在宅医療でしばしば選択されるが,カバーできない細菌や移行性の悪い臓器について熟知しておく必要がある。

一手目 ロセフィン注(セフトリアキソンナトリウム水和物)1回2gを生理食塩水100mLに溶解し30分かけて点滴静注,1日1回

腎機能による投与量調整は不要とされているが,腎機能が低下した患者では抗菌薬関連脳症を生じることもあるため注意する。

  • CTRXではカバーできない細菌の例:ESBL産生菌,AmpC産生菌,緑膿菌,腸球菌,MRSAなど
  • 上記の投与量では不十分な感染症の例:細菌性髄膜炎など


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