[要旨]2023年5月,新型コロナウイルス感染症はパンデミックとしての扱いは終わったが,その後も感染による死亡は継続している。本稿では,死亡診断書(または死体検案書)に基づく人口動態統計と,警察等の捜査による死因に関する統計との相違を考慮し,ついで,コロナワクチン接種の副反応にかかる問題を指摘した。さらに,近年の解剖数の推移について報告し,監察医解剖の減少と司法解剖から調査法解剖への置き換えに関する問題について考察した。
はじめに
筆者らは「コロナ下の解剖事情」とのタイトルで,本誌に2度にわたって投稿した1)2)。それらをふまえ,今回はコロナ後の法医解剖の動向等について記述する。
新型コロナウイルス感染症(以下,コロナ感染症)は2020年1月に日本に上陸し,2月以降は感染拡大を続け,2022年には4万7000人を超える方々が亡くなる3)など,わが国の社会に大きな影響を与えた。その後,感染防止のための社会的規制は緩和され,2023年5月に感染症法上の位置づけが5類に変更になったことによって,事実上,パンデミックとしての特別な扱いに終止符が打たれた。以降,感染者は漸減しているが,コロナワクチン接種による健康被害はいまだに報告されている。
コロナ感染症が,法医解剖等,法医学の現場に与えた影響について考察し,いくつかの提言をしたい。
1 死因の変化
表1は,ここ5年間の死因についてまとめたものである。2023年の死因順位第10位までの項目をもとに,各項目の死者数の推移を載せた。コロナ感染症流行中にも老衰,誤嚥性肺炎の死者数は急増しており,高齢化の高まりをそのまま反映していると考えられる。不慮の事故による死者数は2020年に減少したものの,その後増加に転じている。これは,コロナ禍により行動を厳しく規制されていたが,緩和されたことが影響しているかもしれない。なお,コロナ感染症による死者数は若干減ったものの,5類変更後も依然一定の数を示している。
