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【識者の眼】「NICU退院はゴールではない─早産児を生涯にわたり支えるという視点」豊島勝昭

登録日: 2026.01.29 最終更新日: 2026.01.29

豊島勝昭 (神奈川県立こども医療センター新生児科部長)

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新生児集中治療室(NICU)で、出生体重1500g未満の極低出生体重児が退院を迎えると、ご家族とスタッフで喜びをわかち合う。子どもとご家族の笑顔が、これからの未来へと続いていくことを願いながら見送っている。NICUの退院はゴールではなく、ご家族の生活のスタートである。

新生児医療の進歩により、極低出生体重児の生存退院率は95%を超え、主たる合併症であった脳性麻痺も5%未満となった。一方で、新たな課題が顕在化しつつある。成長・発達には個人差が大きく、NICU退院時点でその後を一律に予測することは難しい。体格や心肺機能、腎機能などに身体的な脆弱性を有することもあり、約3人に1人はアンバランスさのある発達特性を示す。こうした心身の特性は、単独では疾患と言えない場合でも、複数が重なることで、子どもや家族の生活のしづらさとして現れることがある。

当院で出生体重1000g未満の超低出生体重児の保護者を対象にアンケートを実施したところ、約85%が10歳以降のフォローアップを希望していた。小学校高学年から中学生にかけて、学習面や対人関係、自己肯定感などの課題が表面化することがあり、これを受けて就学後支援外来を開設した。超低出生体重児の心身の健康管理は、移行期医療としてとらえる必要がある。

近年、国際的にも低出生体重児を慢性的な脆弱性をもつ存在として理解する「small vulnerable newborn」という概念が提案されている。成長過程で生じる困難に対して、必要な支援が適切な時期に届く仕組みを、社会としてどのように構築するかが問われている。

こども家庭庁の研究として、全国318病院を対象に、極低出生体重児のフォローアップ体制に関する調査を行った。その結果、多くの病院が小学校3年生前後までの支援を必要と考えている一方で、発達評価や就学支援、制度的支援は一病院では完結しないことが明らかとなった。地域における医療・保健・教育・福祉・行政との連携が不可欠であること、さらに社会資源の地域差が大きいことも浮き彫りとなった。共働きが当然となった社会においては、家族の事情に配慮した柔軟な支援も求められている。今後は、こうした実態をふまえ、フォローアップ体制の標準化や地域連携モデルの検討を通じて、政策につながる知見を蓄積していくことが求められる。

日本新生児成育医学会ではフォローアップ認定医制度が始まり、育ちや生活を見据えて退院後も関わる役割が期待されている。NICUでの長期入院を通じて培われる新生児科医と家族の信頼関係は、退院後の成長・発達や生活を支える多職種連携の核となりうる。

低出生体重児の身体的・発達的特性をふまえ、医療・保健・教育・福祉・行政が連携し、生涯にわたる支援体制を各地域で構築したい。子どもたちの支援者は成長段階ごとに変わるため、多職種による横の連携と、年代をまたぐ縦の連携の双方が必要である。

低出生体重児とそのご家族が生きづらさを感じることなく暮らせる社会は、結果として、すべてのご家族にとって子育てしやすい社会につながると考えている。

豊島勝昭(神奈川県立こども医療センター新生児科部長)[新生児医療][NICUフォローアップ医療

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