超高齢社会の進展に伴い、働きながら介護を担う「ワーキングケアラー」が急増しています。介護離職は、本人にとっては経済的基盤の喪失や社会的孤立をまねき、企業にとっては熟練した人材の流出という大きな損失となります。さらに、ワーキングケアラーである家族が介護離職に追い込まれ、経済的・精神的に疲弊すると、患者を支える家族のケア力が低下します。その結果、患者の病状悪化や再入院リスクが高まることも想定され、社会全体にとっても無視できない課題となっています。
このような課題に対し、企業と福祉の架け橋となる存在が「産業ソーシャルワーカー」です。産業ソーシャルワーカーは、従業員が抱える生活課題を福祉の専門性からとらえ、職場と生活の両面を支援する役割を担っています。
仕事と介護の両立に悩むワーキングケアラーは、家族の介護という問題だけでなく、時間的制約、キャリアへの不安、経済的負担、さらには家族間の役割調整といった多層的な課題を抱えています。そこで産業ソーシャルワーカーは、福祉・介護と仕事の両環境、そして家族を含む関係性全体に視点を持つ専門職として、ワーキングケアラーを支えます。具体的には、介護保険制度や地域資源を熟知した「リソースへのつなぎ」、従業員と企業の間に立ち制度利用を円滑にする「環境調整」、心理的負担や家庭内葛藤に寄り添う「カウンセリング」を統合的に行います。単なる情報提供にとどまらず、本人の人生全体を俯瞰した包括的支援を行う点に特徴があります。
また、ワーキングケアラーの多層的な課題は、産業ソーシャルワーカーだけで完結するものではありません。医療機関や地域の関係機関などとの連携・ネットワークの構築が不可欠です。中でも重要なのが、病院と産業ソーシャルワーカーとの連携です。病院が、患者の現役世代の家族であるワーキングケアラーを早期にアセスメントし、必要に応じて産業ソーシャルワーカーとつながることで、介護離職の予防にとどまらず、家族のケア力向上や患者の生活の質(QOL)の向上につながると考えられます。
深刻な介護離職を防ぐためには、福祉の専門性をもって「仕事と介護の両立」を支える産業ソーシャルワーカーの存在が不可欠であり、その重要性は今後さらに高まっていくでしょう。
岡江晃児(NTTデータライフデザインケアライフデザイナー、ソーシャルワーカー)[介護離職][産業ソーシャルワーカー]