本連載でも何度か取り上げた緊急避妊薬(アフターピル)のOTC化が、2026年2月2日からいよいよ本格的に始まります。
ただし、実際の運用は「誰でも棚から取ってレジへ」という形ではありません。緊急避妊薬は要指導医薬品として位置づけられ、要件を満たした薬局・ドラッグストアにおいて、研修を修了した薬剤師が対面で確認と説明を行い、その場で服用(面前服用)が基本となります。オンライン販売は想定されておらず、厚生労働省は対応可能な薬局等の情報を今後掲載予定としています。
価格は、メーカー希望小売価格が1錠6800円(税込7480円)と公表されています。医療機関での自由診療が中心である現状と比べれば安くなりますが、それでも「高い」という声は少なくありません。しかし、緊急避妊薬は毎日使う薬ではありません。ほかの避妊法がある中で、やむをえず避妊できなかった、あるいは避妊に失敗してしまった場合に必要となる薬であり、需要が大きく伸びることが見込まれる薬ではないのです。
「いざというときには必要だが、需要が大きいわけではない」という性質を考えれば、単価が高めになるのは市場原理上、ある程度致し方ないことです。製薬会社に値下げを求めるだけでなく、費用負担の軽減を求める先は行政である、という視点も重要です。英国やフランスでは、緊急避妊薬に限らず、避妊法全般が条件つきで無償提供されています。
長年の検討を経てのOTC化なので、ようやく……感無量……という想いもあるかもしれません。ただ、緊急避妊薬のOTC化によって、何かが劇的に変わるわけではありません。これまでも産婦人科を受診すれば内服は可能でした。入手先が少し広がる、という位置づけです。
地域によっては取り扱い薬局が近くにない場合もあるでしょう。その場合は、これまで通り産婦人科を受診すればよいのです。薬局でも産婦人科でも、より早く処方してもらい、なるべく早く内服することが最優先です。そして、その後の避妊法についても相談できると理想的です。薬局から産婦人科につないでもらう、あるいは薬局と産婦人科が「競争」ではなく「連携」することで、日本のSRHR(性と生殖に関する健康と権利)は、着実に前進していくはずです。
稲葉可奈子(産婦人科専門医・Inaba Clinic院長)[産婦人科][緊急避妊薬][OTC]