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【識者の眼】「AIの過剰診断による医療費増大」康永秀生

登録日: 2026.01.22 最終更新日: 2026.02.21

康永秀生 (東京大学大学院医学系研究科臨床疫学・経済学教授)

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過剰診断とは、主にがん検診などにおいて、被験者に生涯にわたり害を及ぼさず、本来は治療の必要がない病変を早期に発見してしまうことを指す。不必要な精査や過剰治療をまねき、被験者に身体的・精神的負担をもたらす点が、とりわけ問題視されている。それだけでなく、本来必要のない医療費が増大するという点も、看過できない問題である。

甲状腺超音波検査はきわめて感度が高く、放置しても生命予後に影響しない潜在がんを発見してしまう。無症状の集団に対して、甲状腺癌のスクリーニングを目的に行われる超音波検査は、有害無益と言ってよい。被検者の精神的負担は大きく、過剰治療に伴う合併症のリスクも無視できない。結果として、投入された医療費の多くはほぼ無駄になる。

前立腺癌に対する前立腺特異抗原(PSA)検診については、大規模なランダム化比較試験により、がん死亡率を有意に低下させる効果が示されている1)。その一方で、過剰診断・過剰治療が問題となる。がん発見時点で、治療が必要ながんと潜在がんを区別することが難しいため、不要な手術や放射線治療が行われがちである。先行研究によれば、PSA検診の導入によって総医療費は倍増し、その増加分の多くは過剰診断・過剰治療によるものであった2)

同様の状況は、画像診断AIにおいても指摘されつつある。画像診断AIは、医師が注意深く観察しなければ見逃してしまうような微細な変化を検知でき、見逃しのリスクを低下させるというメリットがある。しかし冷静に考えれば、病変を高感度で検出できることは、メリットであると同時にデメリットでもある。AIは「臨床的に重要でない病変」まで拾い上げ、過剰診断を引き起こしうる。実際、内視鏡診断AIは5mm未満の微小ポリープの検出を増やすことが、多くの研究で示されている。微小ポリープはがん化リスクはきわめて低いが、発見されれば患者は切除を希望し、内視鏡医も切除にふみきりやすい。結果として、過剰診断・過剰治療による医療費増大を確実にもたらす。

過剰診断への対処法は大きく2つある。1つは、過剰診断をまねきうるスクリーニング自体を行わないことである。甲状腺癌に対する超音波検査によるスクリーニングは、実施すべきではない。もう1つは、診断されてもすぐに治療を行わないことである。前立腺癌に対するPSA検診では、PSAがやや高値であっても、すぐに治療せずPSA監視療法が選択される場合がある。画像診断AIによる過剰診断にどう対応すべきかについては、医療費増大への影響もふまえ、今後さらに議論を深める必要があるだろう。

【文献】

1) Schröder FH, et al:Lancet. 2014;384(9959):2027-35.

2) Heijnsdijk EAM, et al:Br J Cancer. 2009;101(11):1833-8.

康永秀生(東京大学大学院医学系研究科臨床疫学・経済学教授)[経済学][過剰診断AI

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