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【識者の眼】「高齢者の孤独の背景にある働く世代の孤独」安藤明美

登録日: 2026.01.22 最終更新日: 2026.02.21

安藤明美 (安藤労働衛生コンサルタント事務所、東京大学医学系研究科医学教育国際研究センター医学教育国際協力学)

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昨今、高齢者の「孤立」や「孤独」が社会課題として注目されています。しかし、高齢者が孤立・孤独に至る過程を考えると、その背景に、かつての働く世代における孤立や孤独が存在していたことは想像にかたくありません。では、「職場の孤立・孤独」はいつ頃から始まっているのでしょうか。

職場の孤立・孤独について考えると、「仕事熱心で地域社会との関係性が稀薄な中高年男性」というイメージがまず浮かぶかもしれません。ところが、公益財団法人日本生産性本部による「第12回『メンタルヘルスの取り組み』に関する企業アンケート調査結果」によると、「心の病」が最も多い年齢層として「10〜20代」を挙げた企業が37.6%と最も高くなっていました。前回(2023年)からは6.3ポイント減少しているものの、依然としてほかの年代を上回っています。ついで高かったのは30代(33.5%)で、50代以上は10.0%と最も低い結果でした。みなさんの予想と一致していたでしょうか。

平均年齢の若い職場では、育児に関連した話題が注目されがちですが、職場全体をマネジメントする立場の人々は、若者のメンタルヘルス問題が顕在化しているという現実にも目を向ける必要があります。若年層のメンタル不調の背景のひとつとして、コロナ禍に入社した世代が、周囲との関係性を十分に構築できないまま、その後のテレワークを中心とした働き方に移行したことが挙げられます。これにより、人間関係の構築や仕事のスキルを磨く機会が制限され、孤立感や孤独感を抱きやすくなっている可能性が示唆されます。

筆者のバックグラウンドである家庭医療(総合診療、プライマリ・ケア)では、個々人の孤独の背景を読み解き、地域に存在する支援リソースにつなげるトレーニングを受けます。こうした取り組みは「社会的処方」とも呼ばれます。社会的処方は英国発祥とされ、孤立・孤独、依存症、金銭的課題など、健康問題の背後にある社会経済的要因に包括的にアプローチする枠組みです。リンクワーカーと呼ばれる人々が、受診者をそれぞれの課題に応じたテーマコミュニティにつなぐ役割を担っています1)。リンクワーカーは医療専門家に限られませんが、対象者のライフストーリーや価値観を傾聴し、実際につながりが生まれるまで伴走できるコミュニケーションスキルが期待されます。

話を職場に戻しましょう。2023年から、川上憲人先生が研究代表を務める「いきいき・つながり職場づくり:孤立・孤独を予防する包摂組織の社会実装」が始まっています。

筆者は、職場の孤立・孤独の課題解決においても、リンクワーカーのような存在が一助となると感じています。孤立・孤独、依存症、金銭的問題は、職場においても健康問題の背後にある社会経済的要因となりえます。メンタル不調者への対応を通じて、こうした背景の存在に気づく担当者も少なくありません。詳細は別の機会にゆずりますが、家庭医療をバックグラウンドとする産業医は、リンクワーカーとして職場の孤立・孤独支援においても心強いサポーターとなりうることを、お伝えしたいと思います。

【文献】

1) Bickerdike L, et al:BMJ Open. 2017;7(4):e013384.

安藤明美(安藤労働衛生コンサルタント事務所、東京大学医学系研究科医学教育国際研究センター医学教育国際協力学)[メンタルヘルス][社会的処方リンクワーカー

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