境界性パーソナリティ障害(borderline personality disorder:BPD)は,多くの場合,思春期に発症し,不安定な対人関係,情動不安定性,衝動性,ストレス関連性の精神病様症状を特徴とする。一般人口の1%,外来患者の12%,そして入院患者の22%を占める。受診する患者の大半(約75%)は女性であるが,一般人口の有病率に性差はない。2年目までに約50%,10年目までに85%の患者が寛解し,再発率も低い(約15%)が,寛解に伴う社会的機能の改善はごくわずかである。この疾患が示す社会的機能の不全は,他の主要な精神疾患と比べてもより重篤であるため,その改善は中長期的に最も重要な治療目標のひとつである。
▶診断のポイント
対人関係は不安定で葛藤に満ちたものであり,他者に対する理想化と脱価値化に基づいて,過度の関わりと社会的ひきこもりを交互に繰り返す傾向がある。また,対人関係上の些細なストレスを契機に,激しく急激な情動の変化—たとえば不安な気持ちで目覚め,午後には癇癪を起こすが,夕方には上機嫌になり,就寝前には抑うつ的になる—を示す(これをうつ病にみられる気分の持続的な落ち込みと混同してはならない)。自殺企図,自傷行為,物質乱用,危険な性行動といった衝動性も,しばしば対人関係上のストレスを契機に生じる。些細なストレス下で,一過性に被害念慮,離人症状,幻覚が認められるのもこの疾患の特徴である。また,慢性的な空虚感と関連した,著しく一貫性を欠いた不安定な自己イメージを持つことが多い。
なお思春期にBPD症状を呈した患者は,若年成人期のBPDへと連続的に移行することが近年明らかにされており,この疾患を思春期に診断すべきでないという従来の通念は誤りである。
