医療は特殊であると考える人が大半である。しかし、何を以って「特殊」とするかが重要だ。生命を扱う、規制が多い、公益事業である、非営利である、といった理由が挙げられることが多い。確かに医療にはこうした側面があるが、医療に限ったものではない。
医療者の中には、「特殊なのだから(有利な)特別扱いを受けたい」という文脈で語る人がいる。一方、非医療者は、「特殊なのだから医療者は○○しない、××できない」と批判的に指摘する。しかし、どちらも間違いである。医療には多くの特徴・特性があるものの、それは分業社会における専門分野ごとの特性にすぎず、「特殊」と呼ぶならば、あらゆる分野が特殊ということになり、結局、特殊など存在しないことになる。
あえて、「特殊」と言うのであれば、医療者は、「責任がより大きいため、注意し、最善の努力を尽くす」と言うべきだろう。非医療者は、「医療従事者や医療機関が働きやすく運営しやすい体制を構築・維持しよう」と言うべきである。それぞれの立場・役割・専門性・特性を認識し、理解することが重要だ。
医療が特殊でないのであれば、医療経営も特殊ではない。医療の特性を理解し、それをふまえて経営を考えればよい。もちろん「医療とは何か」「病院とは何か」を理解し、その上で経営のあるべき姿を検討し、実践しなければならない。医療・病院の仕組みや業務は複雑であり(多職種が多部署で並行・共働作業するため)、医学・医療と経営の双方を学び、医療機関ごとの特性を理解する必要がある。
医学・医療を理解し習得することは、きわめて困難であるため、「診療管理は医師がすればよい」「病院管理者に医師はふさわしくない(できない)」「経営は経営の専門家がすればよい」と主張する人も多い。しかし、医療を熟知する医師が、経営を学ぶほうが容易であり、同じ能力であれば逆の道のほうが難しい。前提として、病院経営を適切に行うという意思と覚悟が必須である。
どの分野でも、自組織の対象や特性を理解しなければ経営はできない。多くの企業の経営者は、専門家・専門技術者が担っている。自動車会社なら工学系が、銀行なら支店長経験者が、製薬会社なら工学・理学・薬学系の出身者などが典型である。もちろん、商学・法学・経済学・文学など、そのほかの分野の出身者も多いが、その場合は、自社の製品・サービスへの関与経験があるか、なければ専門知識・技術を学んできたはずである。実践の積み重ねによって経営の専門家になるのであり、理論だけで実践経験がなければ説得力はない。いわゆる「5ゲン主義」が欠かせない。
病院経営も他分野と基本は変わらない。だからこそ、産業界で開発された総合的質経営(TQM)を医療界で導入・推進・展開している点を、改めて強調したい。
飯田修平(〔公財〕東京都医療保健協会医療の質向上研究所研究員、練馬総合病院質管理部部長・名誉院長)[病院経営][総合的質経営]