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【識者の眼】「2026年に向けた病院経営三位一体改革」藤田哲朗

登録日: 2026.01.09 最終更新日: 2026.01.09

藤田哲朗 (医療法人社団藤聖会理事、富山西総合病院事務長、医療経営士1級)

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気がつけば街もクリスマスのイルミネーションに彩られる中、令和7年度補正予算が閣議決定されました。本稿が皆様の目に触れる頃には、予算案は既に成立していることでしょう。今回の「医療・介護等支援パッケージ」では、物価高騰と賃上げへの対応のための補助金が盛り込まれました。病床規模によっては数千万円、場合によっては数億円規模の補助金となります。

数字だけを見れば非常に大きな金額であることは間違いありません。しかし、現場を預かる経営者の実感としては、率直に言って「1桁足りないのではないか」というのが本音ではないでしょうか。昨今の光熱費や材料費の高騰、そして何より人件費の上昇によるコスト増は、この補助金だけではカバーできません。公的支援のみに期待するのはそろそろやめて、医療機関自身が変容していかなければ、この窮状を脱することはできない段階に来ているように思います。

今、我々が取り組むべきは、①安定した診療収益の確保、②業務見直しによるコスト構造改革、③これらを原資としたスタッフの賃上げ、という三位一体改革です。

具体的に数字で考えてみましょう。たとえば500人のスタッフに対して月1万円のベースアップを行うには、単純計算で年間6000万円の原資が必要になります(法定福利費等は一旦置きます)。「6000万円の利益を出せ」と言われると途方に暮れますが、入院診療単価3万円の患者が1人、365日入院すれば約1100万円の収益です。ここから変動費として薬剤費や消耗品費などとして仮に30%ほど見込むと、1日当たりの在院患者を「あと8人」増やせば賃上げの原資を捻出できる計算になります。「6000万円稼げ」よりも、「患者を8人増やそう」のほうが、現場も現実的な目標として共有しやすいのではないでしょうか。

次にコスト構造改革です。昨今、医療DXや生成AIがもてはやされていますが、現時点で病院経営の数字に与えるインパクトは限定的だと私は見ています。むしろ着目すべきは、給食、清掃、物流など、これまで「安くすむから」と外注してきた業務です。最低賃金の上昇に伴い、委託費の高騰は避けられません。ここで発想を転換し、たとえば2000万円で外注している清掃業務を直接雇用に切り替えてみる。これだけでも控除対象外消費税の負担は大きく減少します。そこにロボット掃除機などのDXを組み合わせれば、質を維持しつつ、さらなるコスト削減も可能になります。

高齢化に伴う社会保障給付の増加は不可避であり、現役世代の負担を考えれば保険料の大幅な引き下げも非現実的です。この矛盾を突破するには、国全体で賃上げを行い、経済を回していくしかありません。政府の強い意向もそこにあり、医療機関だけがこの賃上げの流れから逃れることは不可能です。2026年も病院経営にとって安心できる環境とは言えませんが、変化を恐れず、腹を括って、ともにこの難局を乗り越えていきましょう。

藤田哲朗(医療法人社団藤聖会理事、富山西総合病院事務長、医療経営士1級)[病院経営][医療・介護等支援パッケージ三位一体改革

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