COVID-19パンデミック以降、近場で用を済ませる習慣がすっかり身についていたが、先日、久しぶりに渋谷に出向く機会があった。かつては大型CDショップや映画館を目当てによく訪れていたこの街は、いまや大規模再開発の真っただ中にある。ハチ公は元の場所にいたものの、銀座線のホームは想定外の位置に移り、東急百貨店は姿を消し、代わりに新しいビル群が林立していた。
記憶にある街並みはすっかり変わってしまったが、スクランブル交差点の人混みは相変わらず。しかし、そこに立つ人々の多くは外国人旅行者で、日本人の私はまるで映画『Lost in Translation』の世界に迷い込んだようだった。地下へと戻り案内表示を頼りに、かろうじて土地勘が残る109ビルへ向かう。地下2階のプリクラ(NHKでは「プリントシール機」)コーナーを抜け、エスカレーターで地上に出たとき、ようやく「昔の渋谷」の感覚が蘇った。
さて、「2025年問題」と呼ばれた年も終わり、医療界もまた大きな転換期を迎えている。高齢化の進行や外国人患者の増加により、医療が直面する問題は一段と複雑になり、多職種連携はもはや不可欠だ。さらに、厳しさを増す医療経済の中で、働き方改革やDXへの迅速な対応も求められ、課題は山積している。どれも以前から指摘されてきた問題だが、その対応は依然として後手に回っている印象が強い。
そんな中、先日ニュースでプリクラが紹介されていた。1995年にわが国で開発され、2025年で30周年を迎えるという。一時期より設置台数は減ったものの、若者向けの新機能が次々と追加され、今なお根強い人気を保っているらしい。なるほど、渋谷109地下のプリクラコーナーは、かつてと変わらず若い女性たちでにぎわっていた。
時代に応じて進化し続けてきたのはプリクラだけではないが、ふと「私たち医療者はどうだっただろうか」と思う。変化に伴う痛みは避けられない。しかし、その痛みを訴えるだけでは社会の理解は得られない。必要なのは、自ら変わろうとする姿勢であり、新たな機能を「追加し続ける」意欲なのだと思う。環境の変化に適応することで、ようやく未来を切り拓くことができる。今からでも決して遅くはない。
しぶとく生き残り続ける渋谷のプリクラから、私たちも柔軟でしなやかな対応力を学びたいものである。
松村真司(松村医院院長)[時代の変化][適応力]